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気付いたら2月も半分過ぎていた……なぜ1月・2月はこんなに過ぎるのが早いのか……。
「むしろ、そうなったらエレーナ様を王妃で、あちらを側妃か愛妾にしそうですね。エレーナ様はお仕事だけさせられそうです」
「げぇっ。どうしよう。もうこうなったら修道院行くしかないかしら。昨日王妃様から見捨てないでくれなんて泣かれたけど。嫌がっているのに婚約を押し付けといてほんとうざいわ」
断れない婚約を押し付けておいて次は「捨てないでくれ」と被害者面である。確かに言葉はとても悪いが、うざい。
「それは腹が立ちますね。でも修道院に行ったらパフェが食べれませんよ」
「そうなの! そこが問題なのよ! ねぇ、カフェを併設した修道院なんてどうかしら!」
それはもはや修道院ではないのでは……。辺境の修道院に行ったエレーナ様が辺境を第二の王都にする未来しか見えないのはなぜだろう。ジャンル違わない?
「エレーナ様は以前、エドエド殿下達は放置の方向とおっしゃっておられましたが最近は積極的に動いていらっしゃいますね」
「私が動いてるっていうより周囲が動いてるのよね。エドエドだけ何もしないで他の女のお尻を追っかけてるのに、私だけ縛られるのはずるいってオブラートに包んで主張しただけよ。王妃教育なんて進んだ分だけ逃げられなくなるんだから何としてでもサボらないとね」
「王妃様たちが動いていらっしゃる感じですか?」
「あの親は甘いから、注意しつつもグダグダ有耶無耶になってるだけよ。でも、私には都合がいいわね。だって障害があるほど気持ちが燃えるでしょ?」
「エドエド殿下達の恋のお話ですか?」
「エドエド達のことを恋と呼ばないわよ。誰かに邪魔されないと燃えない恋なんて恋ではないわ。あれはキャミラちゃんが強欲で、エドエドが責任から逃げたい弱虫なだけでしょ」
うん、なんか名言が出た気がする。すごい。カッコイイ。言った本人は大きな口でケーキを頬張っているけれども。
「私は解放されたいから、恋だろうと強欲だろうとどっちでもいいんだけど」
「もういっそ第一王子が国王にふさわしくないということで第二王子あたりを立太子させて、エドエド殿下はエレーナ様のお家のハベル公爵家に婿入りってことにしたらどうですか?」
エレーナ様は一人っ子だ。エドエド殿下が立太子されていないし、後継ぎの養子もまだいない。それにハベル公爵もまだまだご健在だ。
「嫌よ。我が家が没落するもの」
エレーナ様は没落を即答。
「婿入り後に病死すれば問題ないのではないでしょうか?」
「……なるほど? 公爵家なら私のテリトリーだから王城よりも手が出しやすいわね。うちに招いて婿入り前から何か盛っておくのもいいわね」
「エレーナ様にお好きな方がいらっしゃるなら結婚前にやってしまうのが一番良いですが……別に好きな人もいないということでしたら結婚後にやっちゃうのもアリではないでしょうか。周囲もしばらくは同情して再婚を薦めたりしないでしょうし。釣書はたくさん届くでしょうけれど」
「現実的で良い案よね。王族としか見ていなかったから、臣籍降下っていうアイディアはなかったわ。それにしても、あなたってたまにアッシーに見える時があるわ。今だって私に王家からの護衛がついていないのを確認して話をしたものね」
「ここはハベル公爵の親戚の方が経営されているカフェの一つではないですか。安心できる場所かつエレーナ様がエドエド殿下のお話を始めない限りこのようなお話はしませんよ。さすがに国家転覆罪や反逆罪なんかの罪に問われても困ります」
「今の王家の力ではこのくらいじゃ罪には問えないわよ」
「それを聞いて安心しました。あとはテンプレですがパーティーで婚約破棄させるとか、いっそエレーナ様が婚約破棄するとか、他国の王子からエレーナ様が求婚されれば友好関係のためだとなって婚約解消に向かうかもしれませんね」
「そのあたりよね。でも私、テンプレって嫌いなのよね……」
「わかります。でもテンプレほど強いものもないですね」
「そうなのよねぇ。その辺りも考えないといけないわ。でもそろそろ時間切れね」
「え?」
「アッシーのお迎えよ。あなたに」
カフェの個室の窓からハウザー公爵家の家紋つきの馬車が見えた。
「えっとでも、約束はしていないですよ? ここに来ることも言っていないですし」
「あの男はあなたに毎日会いたいに決まってるでしょ。私が伝えておいたのよ。前に払ってもらったし、今日は無理矢理付き合ってもらったからここのお代は任せておいて。じゃあまた学園でね」
なぜか吹っ切れたような顔でエレーナ様はぴらぴらと手を振る。
その後、個室に案内されたアシュフォード様に強く腰を抱かれて、さっさと帰らされたのは言うまでもない。