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いつもお読みいただきありがとうございます!

エドエド殿下が休みだからと油断はできない。

えーと、カミラさんだっけ、キャミラさんだっけ。最近目まぐるしいからあの方の名前を覚えていられなくなっちゃった。


「香水臭い。あの女が来る。ブランドン、阻止してこい」


「アイアイサー」


イヌ並みの嗅覚で香水を嗅ぎ付けたアシュフォード様とブランドン様のこんなやり取りを何度か聞きながら迎えた学園の休日。


私達一行はダフ侯爵邸に到着した。

エレーナ様は王妃様に呼ばれているので今日はいない。ストレスの原因は王妃様の呼び出しだった。


迎えてくれたのはツンツンしているジゼル様と、全くツンツンしていないジゼル様のお母様である侯爵夫人だった。


「この子がお友達を連れてくるなんて珍しいわ。すでにお友達のところでお泊りもしているなんて!」


「お母様、余計なことは言わないで」


「あなたがお友達を招いたから嬉しいだけよ」


こう見るとジゼル様はお母様にそっくりだ。でも侯爵夫人はツンデレではないように見受けられる。


「ハウザー公爵令息はお久しぶりね。あなたの活躍のお話はうちにも届いているわ」


「もったいないお言葉でございます」


アシュフォード様が言ってたわね。ダフ侯爵家の本当の権力者はこちらのダフ侯爵夫人だと。ダフ侯爵もなかなか落としにくいんだけど、侯爵夫人の言う事は良く聞き入れるんだとか。

だから、本日はアシュフォード様の毒舌も鳴りを潜めている。そもそもこのやり取りでは毒舌の出番はないかも。


「そして婚約者のシャイス伯爵令嬢ね。ジゼルは気が強いでしょう? 仲良くするのは大変じゃなくて?」


上品な侯爵夫人は綺麗な笑みを讃えて私に顔を向ける。


「そんなことはありません。テスト勉強ではとても丁寧に根気よく教えてくださいます。私の成績も上がりました」


ジゼル様が根気よく丁寧に教えるというのは事実だ。私は教えてもらってないけどブランドン様との様子を見ていたら分かる。ちなみに私の成績が上がったのも本当だ。ブランドン様とジゼル様の二人が勉強しているやりとりを隣の部屋で聞いているとけっこうタメになるのだ。


あら、私、うまいこと真実に嘘を織り交ぜたと思ってたけど、事実しか言ってないわ。


「ふふ。そうなのね。そしてそちらは、ミュラー伯爵令息ね。ジゼルからはあなたにも勉強を教えていると聞いたわ」


やっと本命のブランドン様に話を振られた。アシュフォード様は「ブランドンは素で行こう。変にプレッシャーをかけると明後日の解釈をする」と言っていたので特にブランドン様とは詳しい打ち合わせはしていない。


「はい! いつもお嬢様には大変お世話になっております! おかげ様で赤点を取らずに済みました!」


ブランドン様は大変ハキハキと話す。赤点云々は要らなかったのではないかと思うが、調べたらすぐに分かることなのでまぁいいかと思う。


どうやら赤点などと包み隠さず話し、「成績が上がったのは全てジゼル様のお陰」と言った辺りから侯爵夫人のブランドン様に対する印象がグッとアップしたようだ。

二人で騎士団のことやミュラー伯爵のことについて楽しそうに話していて私達三人は若干蚊帳の外である。もちろん、合間合間でにこやかに頷くことはしている。

にしても侯爵夫人、えらく騎士団について根掘り葉掘り聞くなぁ。


「まぁ。あの隊長に稽古をつけてもらっているのね。あの方は剣術大会でもトップに食い込む方だからお強いわね」


「はい、そうなんです。ゴメス隊長のことはとても尊敬しています」


「あなたのお父様も騎士団に所属していらっしゃるわね。副隊長だったかしら」


「はい! そうなんです! 父をご存知なのですね!」


副隊長クラスまで覚えているとなるとすごい。騎士団ファンや騎士団関係者なら知っているだろうが……。隊の数も多く、一般的に知られているのは隊長クラスからなのだ。

副隊長であるお父様がしっかり認知されていて、ブランドン様がえらく嬉しそうなのも仕方がないでしょう。

それにしても、侯爵夫人となると騎士団についてもよくご存じなのですね……。



こんな感じで侯爵夫人と和やかに話が進む中。


「ところでガーディアンクラブはどうだったの?」


侯爵夫人の口からそんな言葉が飛び出した。ジゼル様はタイミング悪く紅茶を飲んでいたので咽せた。


アシュフォード様はこういう揺さぶりには慣れていらっしゃる。紅茶を飲んでいたが咽せたり、動揺したりなどしない。私もアシュフォード様で鍛えられたので少々のことでは驚かないのだ。

ブランドン様はガーディアンクラブのことを知らないので素で訳が分からないというキョトン顔をしている。


「ガーディアンクラブといいますと、怪我で現役引退を余儀なくされた騎士や冒険者の方々が働いているクラブでございますね。そのクラブが何かありましたでしょうか?」


咽せて水を飲むジゼル様を心配しながら、侯爵夫人に問う。


「そのクラブに先日行ったのでしょう? 感想をお聞きしているのよ」


「いえ……侍女から聞いてクラブの名前は知っておりましたが行ったことはございません。そのため感想と言われても困ってしまいます」


下手なことは言えない。鎌をかけられているだけかもしれない。

ガーディアンクラブは貴族がメインで利用する店だ。守秘義務はバッチリなのだ。


私は困った顔を作って侯爵夫人を見つめる。侯爵夫人は綺麗な笑顔のまま私を見ている。

すみません、怖いです。綺麗な人の作り笑顔って怖いんです。今すぐお家に帰りたいです。


ブランドン様は「ガーディアンクラブ? ガーディアン? カーディガン?」とブツブツ言っているし(カーディガンクラブとか笑いそうだからやめて欲しい)、アシュフォード様は見えないが困り顔か怪訝な表情を作って侯爵夫人を見つめてくれているハズ。


ジゼル様は水を飲んだがまだ咽せていて顔が赤い。

ゲホゴホという音だけが部屋に流れていた。

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