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お待たせしました。

「えっと。これは一体……どういう状況?」


「あ、エレーナ様。今日は王宮でのお勉強はお休みの日でしたっけ? お菓子どうぞ!」


「えぇ、今日はお勉強はお休み。王妃様の愚痴もきかなくっていいわ」


ふらっと部屋に入ってきたエレーナ様はテーブルにつくと私が素早く出した焼き菓子の山に早速手を伸ばす。


「ねぇ、なんで鞭持ってるのに机を蹴るのかしら」


「足が出ちゃうタイプなんでしょうねぇ」


私たちの視線の先にはドアで仕切った隣の部屋にいるブランドン様とジゼル様。

ブランドン様は机にかじりついており、ジゼル様はその脇に立って鞭を手にしながらなぜか机を足で蹴っている。暴力はよくないですよ。


「ちょっと! そこはさっき教えたじゃない! なんで間違えてるの!」


「すみませ~ん」


ジゼル様のキリキリする声とブランドン様の間延びした声が響く。このやり取りがさっきからずっとだ。まぁブランドン様の覚えの悪さは今にはじまったことじゃないから……。


この部屋は元々空き教室だったが、廊下の端にある部屋ということで人目につきにくく、エドエド殿下とカミラさんのキャッキャッウフフな現場が何度も目撃されていたお部屋なのである。目撃者だって同じ事しようと思ってこの部屋に来たカップルだったりするのだが。あ、ちなみに断じて私とアシュフォード様のことではないです。ほんとです。


そのクレームを耳にしたアシュフォード様が学園と王宮にかけあって、この部屋を改装して鍵をつけ自分の仕事部屋にしてしまいました。3部屋に仕切ってあり私たちのいる左隣のお部屋でブランドン様とジゼル様が試験勉強をしています。他では人目について噂になりますからね。右隣ではアシュフォード様がお仕事をされています。


エレーナ様はこのお部屋を仕事部屋にするために尽力してくださったのもあり、エレーナ様の息抜き部屋にもなっています。今みたいにふらっとこのお部屋に来られます。


「あら、この仕事……エドエドのとこにいくやつじゃない?」


エレーナ様は私がまとめている書類を覗き込みます。さすがエレーナ様。お分かりなんですね。


「アシュフォード様のところに紛れ込んでいたみたいです」


「はぁ……そういうところだけ知恵が回るわね」


守秘義務とか色々まずいと思うのですが、エドエド殿下も一応公務は振られています。でも、急ぎでなかったり誰がやってもいい公務を振られているので私が見ても問題ないそうです。大丈夫なのかな、本当に。

そんなエドエド殿下に振られたはずの公務がなぜかアシュフォード様のところに来ることがあるので、そのたびに突っ返さないといけないのです。


「よし、なら最後の書類だけ上下逆にしてやりましょう。嫌がらせよ、嫌がらせ」


「え!?」


「全部やるとバレるからちょっとミスしただけなんです、くらいの量にしましょう。でもあのバカだってアッシーに自分の仕事を流してやって貰おうとしたなんて言えないだろうから……やっぱり全部上下逆にしましょうか」


フフフと笑みを浮かべながらまとめられた書類をほどき、一番最後の署名が必要な書類だけ逆さにし始めるエレーナ様。


「こっちは最後から2枚目を逆さにしましょ」


地味な嫌がらせだが、エレーナ様は実に楽しそうである。


「あら、エレーナ様。こんなところでお菓子を食べているお時間がおありに? 今頃あのバカ殿下と尻軽浮気相手はヨロシクやっているのではなくって?」


おぅ、隣の部屋からジゼル様が鞭を持ったまま出てきました。ブランドン様は問題でも解いているのか机にかじりついています。にしても周囲に人がいないからって素を出しすぎではなかろうか?


「あらあら、ジゼル様。あのバカ殿下は王宮に軟禁されて公務とお勉強をやらされていますわ。はぁいくら王命だといっても不出来な婚約者を持つと苦労しますわ。ああ、ジゼル様にはお分かりにならないお話でしたわね」


「うふふ。()()()()()()()は私にはいないものですから」


「そうですわねぇ、()()()という単語はジゼル様の辞書には載っていらっしゃらないようですものね」


「ふふ。いくら王命とはいえ、()()()()()()()の尻ぬぐいは嫌ですもの。しかも浮気までついてくるなんてエレーナ様がとぉっても不憫ですわ。いっそ、婚約者がいない私の方が良いと思ってしまいますわ」


「あら、ではお譲りしますわ。私の他に王家に嫁げるような家格で()()()()()()()ご令嬢ってジゼル様だけですもの!」


やばい、2人とも超笑顔なのに会話内容が皮肉と当て擦りばっかりで超怖い。ちょっとアシュフォード様にお菓子を持って行こう……。

2人の会話から逃げる様にアシュフォード様のいる部屋に行くと、相変わらず眉間にシワを寄せて書類を片付けまくっていた。


「私なら毒殺しますわ」


「でも証拠のでないような毒ってあるの? 無理じゃない? 私も悪戯と称して辛い調味料をお茶に入れて試したけどあのバカ、中々勘が良くてそういう時飲まないのよね」


「毒見役もいますものね……やっぱり大ポカをやらかすのを待つしかないかしら」


「大ポカって何よ? 婚約者費用の横領でも婚約は続行のままだし」


「王子が留年しまくったら?」


「うーん、1年留年はさせるかもしれないけど……それ以上は王家から圧力をかけて進級させそうじゃない? 王妃様は甘いのよね」


アシュフォード様の邪魔をしないように2人のところに戻ると、相当減ったお菓子を摘まみながら不敬オンパレードで具体的な話をしていた。なんだかさっきより仲良くなっているようで何より?です。


お読みいただきありがとうございます!

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