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恥ずかしさを感じてるほどの余裕はなかった。それほどセイコの移動速度が速く、目も開けていられなかった。俺を抱えているとは思えないほどの速度で移動していく。
どのくらい経ったのだろうか? まだ数分くらい二しか感じないが、セイコの足が止まった。俺が止まったことに気が付き、目を開けると、目の前には街への入り口があった。
「着いたよ、アキヒコ君。思ったよりも私の体、強化されてるみたいだね。すぐ着いちゃったよ」
「ほんとにびっくりだよ。速すぎてメモあけれなかったんだからな」
「なんかごめんね。私は体が今お力に適応してるのか知らないけどなんともなかったからつい。そうだよね。アキヒコ君は普通の体だもん、気を付けないと」
すげぇな。俺もじゃんけんに勝っていたらこの能力がもらえてたのか。あー、なんであそこで俺はかてないかなぁ。そういうところがだめなんだよ。そしたら今まで起きたイベントは立場が逆で行われてたかもしれないのに…………俺がセイコをお姫様抱っこしてみたかったな。
「モンスターがいるってことは冒険者がいるはずだ。ひとまずは冒険者になってお金を稼ぐのがいいんじゃないか?」
「よくわからないけど、わかったよ。アキヒコ君がそういうなら私もそうするね」
「それじゃあ、冒険者ギルドを探して街を歩こうか。すぐに見つかればいいんだけどな」
やっぱり異世界と言えば冒険者だよな。この世界の住人は全員が俺と同じ一般人のはずだ。それならなんの能力もない俺でも冒険者としてやっていけるはず。能力なんかに頼らなくても成り上がれるところをあの子に見せつけてやる。
俺たちが歩いていると、何やら武器を持った人たちが集まっている場所を発見した。絶対あそこが冒険者ギルドだ。ついてるな、こんな速攻見つかるなんて。
「たぶんあそこだな。冒険者っぽい人たちが出入りしているのが見える」
「頼りになるね、アキヒコ君は」
このくらいのことしか役に立たないからな。せめてセイコに愛想をつかされて置いていかれないよう頑張るしかない。
「お、やっぱりあってたみたいだな。まずはカウンターで冒険者登録をするか」
中へ入ると、そこは想像をしてた通りに光景だった。クエストボードの前でクエストを物色している冒険者たち、受付カウンターに並びクエストの受注をしている冒険者たち。
「へー、これが冒険者ギルドなんだね。私は役に立てそうかな?」
「もちろんだ。セイコがいないと俺一人でモンスターを狩るなんて考えられないからな。むしろ俺がいらないレベルだ」
「そんなことないよ。アキヒコ君がいないと…………ううん、なんでもない」
まあ、いいか。それよりも早く冒険者登録を済ませないと。てかお金かかったりしないよな。そんなことになったら俺恥ずかしさで死んじゃうよ。あほすぎるだろ。
「とりあえず登録だな。たぶんこの列だと思うから並んで待とう」
「わかったよ。なんだか私ちょっとわくわくしてるかも」
「どうしたんだ? こういう世界にでもあこがれてたのか?」
「まあ、そんなところ。一緒に頑張ろうね」
俺も何か起きないかと願ったりはしてたんだけどな。実際に起きてみると、意外に思い通りいかないもんだな。もっと俺が主人公として活躍できるようなことを想像してたからな。今のところは女の子に守られているモブキャラもいいところだ。
「冒険者登録をしたいんだけどできますか?」
「あ、登録の方ですか? わかりました。ではちょっと説明があるのであちらのカウンターのほうへお願いします」
「すいません、ありがとうございます」
まさかの並ぶとこ間違えてた。うわ、恥ずかしっ。ちょっと調子に乗ってできる男感出してたから余計に恥ずかしさが…………。
お姉さんに言われた方を見ると、人が並んでいないがカウンターがあるのを発見した。どうやらあっちだったみたいだ。あんなの普通ならばないだろ。しかも今のを見てたのかお姉さんが俺たちに向かって手招きをしている。
「冒険者登録の方ですよね。それでは説明をさせていただきます。まずは冒険者になるには初めに試験を受けてもらいます。あまりに全員を冒険者にしていたら、死人が絶えませんから事前に少しふるいにかけるというわけですね。試験はギルドに併設されてある試験場で行います。その試験の結果に応じて冒険者ランクのほうが確定します。とはいえ、クエストをクリアしていくと上がるのでご心配なく。とりあえずはこれくらいですね。残りの説明は試験を突破してからになります。試験頑張ってくださいね」
「えーと、今からすぐに試験は受けれるんですか?」
「はい、基本的にはいつでも対応しています。今は試験を行っている人もいないのですぐに受けられますよ。準備などのほうはよろしいですか?」
「大丈夫です。試験のほうをよろしくお願いします」
お金はかからないみたいだけど、試験があるなんて…………俺冒険者になれなかったらどうしよう…………そうなればセイコと一緒に行動することもできない。ここが俺のセカンドライフのターニングポイントだな。気合を入れていこう。