あそこの席
クラスメイト達が次々とクジを引いていく。
次は俺の番だ! 番号は12か……まだ12番はどこか発表されてないから、どこに移動するかは分からないけどな。
エリザの方をチラッと見ると、エリザもこっちを見ていて俺に微笑みかけてくれて、さらに俺に投げキッス。
口パクだが多分あれは…… だ・い・す・き
かな? そしてまた投げキッス……照れるけど、エリザ超可愛い! ノロケてるんじゃないんだ! 本当に可愛いから! みんなに教えてあげたいが、これは俺だけがしてもらえる特権、エリザの可愛い仕草は俺だけの物だ!
なんて1人ニヤニヤしながら考えていると、ついに席の番号が書いた紙が黒板に張り出された、俺の番号は……あった!窓際の前から2番目か~! さて……移動するか! エリザはどこかな~? となりだったら……へへっ♪
しかし現実はそう甘くはなかった……
エリザは廊下側の後ろから2番目……俺達は端と端、前の席より遠くなってしまった……
ああ……エリザがあんなに小さく! 元から小さくて可愛いあのエリザがより小さくなってしまって……
エリザ~! 俺が見えてるか~?
みんな席の移動が終わったみたいだ、そして俺のとなりになった女子に話しかけられた。
「シュウくんがとなりなんだ、しばらくよろしくね♪」
俺のとなりになったのは、通称サセ子。
本名はサエコだが、こいつはあまりいい噂を聞かない。
男を取っ替え引っ替え、頼めばすぐにウェルカムしてくれる、人の彼氏を横取りする……など色々な話を聞く。
そういえば彼氏を取られて泣いていた女の子を見たことあるな~
「ああ、よろしくな」
「でさ~、シュウくんってエリザちゃんと付き合ってるの? もうヤった?」
「な! いきなり何言ってんだよ!」
マジかよ! 新しい席になって一発目の会話それなの!? お下品! 俺とエリザは清くて上品なお付き合いなんだからね! ……めちゃくちゃチュッチュしてるけど……
「まだヤってないの~? もしかしてシュウくんドーテー? それならウチが筆下ろ……うっ!!」
ど、ど、ど、ど、ドーテーだけど何か問題でも!? 俺のドーテーはエリザに……
「って、どうした?」
「な、何でもな……あっ!ヤバい! クリスせんせー! ト、トイレ行ってくる!!!」
「……いいよ、行ってらっしゃい」
なんだ!? いきなりお腹をおさえて……
っ!! どす黒いオーラを感じる! これは……
恐る恐る廊下側の2番目の席の方を見ると
どす黒いオーラを出しながらこちらをニコニコしながら見るエリザと目が合った!
目が笑ってないから恐い! 俺なんも悪い事してないのに冷や汗ダラダラだよ!
お願い、いつもの優しいエリザに戻って!
…………
「……あのビッチ! 私の愛するシュウちゃんに色目使って……シュウちゃんの貞操は私が守る! このお腹を下す呪いを……えい!」
(とブツブツ言ってたです! って、放課後にジュリの奴がわざわざ報告してきた)
そしてその日、サセ子が教室に帰って来ることはなかった……
「……席替えも終わったから、授業始めるよ?」
クリス先生がそう言って授業を始めようとしたその時、エリザが急に立ち上がり、スタスタとクリス先生の前に歩いていく。
何してるんだエリザは?
「……エリザさんどうしたの? 授業始めるよ?」
「クリス先生、あそこの席じゃあ黒板見づらいから、席を替えて下さい!」
「……そう? じゃあ1番前の……」
「クリス先生、あそこの席が空いてるからあそこでいいです」
そう言ってエリザは俺のとなりの席を指差した。
「……あそこはサエコさんの……」
「あそこの席が空いてるから」
「……だからサエ……」
「あそこの席が空いてるから」
「……だから!」
「先生? ちょっとお話しましょ?」
そう言って、エリザはクリス先生に何やら耳打ちをしている。
「……エリザさん……えっ!? ……それは……やめて……弟を? ……そんな! ……パンツ…………わかった! 好きな席に座っていいですから! どうか弟だけは!」
えっ!? 何? 何なの? クリス先生が怯えてるよ? エリザ? 一体クリス先生に何言ったの!? だから目が笑ってないよ? いつもの可愛いエリザ、カムバック!!
そして……
「シュウちゃん、なんかとなり同士になっちゃったね? これからよろしくね♪」
とびきり可愛い、いつものエリザスマイル!
この顔を見たら俺はもうメロメロだよ!
「ああ! よろしくな、エリザ」
「うふふ、シュウちゃん♥️」
「エリザ……」
そして……
「じゅ! 授業を始めてもよろしいですか? エリザ……さま」
「えっ!? さま!?」
「うふふ♪」
クリス先生、どうしちゃったの!?
エリザも、うふふ♪ って!
気になる! 気になるけど……
「シュウちゃん♥️」
エリザのこの笑顔には敵わないなぁ~!
これもダークエルフだからなのかな?