【11年前、中東紛争地区】
俺がまだ狙撃手として認められる前。
捕まえた酔っ払いの体に、爆弾を巻き付けたことがあった。
そして爆弾を外す鍵は、通りの角に止めてある中東軍の装甲車の中だと教えて放した。
酔っ払いときたら、良い年をして涙と鼻水、それに小便を漏らしながらヨタヨタと装甲車に近づいて行った。
警戒にあたっていた数人の兵士が、銃を構えて止るように命じるが、酔っ払いは「鍵をくれ」と泣き叫ぶばかり。
足元に威嚇射撃されても、怯まず装甲車に近づいて行く。
逆に怯んで後ずさりしているのは中東軍の兵士達だった。
その光景を俺はヤザ達と一緒に見ていた。
ヤザ達は、なにが可笑しいのかクククと笑いながら、俺の作った起爆装置を握っていた。
兵士の一人が、持っていたマシンガンではなく拳銃を使って、酔っ払いの足を撃ち、酔っ払いは俯せに倒れた。
地面に蹲ったまま、酔っ払いは泣いている。
暫らく離れて見ていたその兵士が、その酔っ払いに近づき、そのタイミングでヤザが起爆装置のスイッチに手を掛けた。
耳鳴りがするほどの激しい爆発音。
砂ぼこりで何も見えなくなった”通り”
やがて幾つもの悲鳴が聞こえ、砂ぼこりが薄くなって見えたものは、居なくなった酔っ払いと横たわる中東軍の兵士。
そして俺と一緒に居たはずのヤザ達は、どこかに消えていた。