表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/234

【2年前、リビア“Šahrzād作戦”⑪】

 コンコンとドアをノックする音が聞こえ、ボーイが朝食を運んできた。

 背の高い黒人男性。

「ブラーム!」

 白い服が良く似合う。

 たった一日離れただけなのに、懐かしくて抱き着いていた。

「よう。二等軍曹」

 戸惑いながら、そのゴツゴツした手が肩に置かれる。

“いけない、昨日からすっかりエマのペースに、はまって思わず抱き着いてしまった”

「どうしてここにいる?」

 体を離して俺が見上げると、ブラームがエマの方を向いて、回答を促す。

「実は、このホテルのオーナーはフランス人で以前から懇意にしてもらっていて、つい先日ここのセキュリティー担当者が二名辞めて空席が出来たの。それでアフリカ人とスウェーデン人の二人を雇ったって言うわけ」

「スウェーデン人、ニルスもか?」

 ブラームがコクリと頷く。

「じゃあ、辞めた二人って言うのは」

「そう、エージェントよ」

「回収した武器は、セキュリティー担当者のロッカーに仕舞っておく。俺とハンス少尉は交代でどちらかが部屋にいるが、もしも居ないときは暗証番号19450815を押せばいい」

「覚えやすい番号だな」

 暗証番号は、世界中を巻き込んだ大戦争が終結した日。

「他にHK416も2丁置いてあるから自由に使ってくれ」

「さあ、さっさと朝食を食べてファジル(早朝の礼拝)に行くよ」

「気を付けろよ」

 帰ろうとするブラームに、そう言った。

「ああ、軍曹も……」



 朝食を済ませ、外に出ると直ぐにアザーン(礼拝の始まりを告げる放送)が鳴り出した。

 急いでモスクに向かい、そして礼拝を終え、セバが居ると言った場所に向かった。

 セバは居た。

 しかも仲間らしき5人の若い男たちと一緒に。

「よう、来たな。で、どうする?」

「泊めてもらうわ、もう少しここに居たいから」

「豪華ホテルじゃないけど、いいのかい」

「いいわ。あんな外国人が経営するホテルなんて、まっぴらよ」

 あれだけホテルを堪能しておきながら、どの口が、そう言うのかと思って聞いていた。

「荷物は、それだけかい」

「そうよ」

 エマが答えるなり、周りを取り囲んでいた男がエマと俺のバッグを取り上げた。

「何をする!」

 咄嗟に取られたバッグを取り戻そうとした俺を、エマが止める。

「ちょっとぉ、何すんのさぁ」

 エマがセバに文句を言った。

「すまねえな。宿の主は少し気の難しい男でね。ほら、この辺りは治安が悪いだろ。先日もフランスのスパイってぇ奴が一人、街中で銃を撃ったばかりでさ。まさかとは思うが、護身用の銃やナイフを持っていないか調べさせてもらうぜ」

 一人の男が俺たちのバッグを調べている間、二人の男が後ろから俺たちの肩を掴み、正面に立った男二人が銃床のないAK47を衣服に隠して構えていた。

 少し滑稽に思った。

 その体制で銃を撃ったら、確実に仲間を撃ってしまうじゃないか。

 所詮、テロ組織の底辺に居る奴なんて、この程度。

「大丈夫、普通の旅行者だ」

 バッグを調べていた男が声をかけるとセバが、まるで今気が付いたかのように銃を構えている二人に「何してるんだ、大切な客人に銃など向けやがって」と怒った。

 芝居じみている。

 肩を抑えていた男の手が離され、俺は肩を払う。

 そう、着いたゴミを掃き捨てるように。

 それを見たセバが「生娘か?」とエマに囁く。

 エマは「シエヘラザードよ、王が求めるなら相手をさせるわよ」と、笑って言った。


“おいおいこの女、作戦名まで言っちゃったよ”


“って、俺は求められても、王の相手などしないぞ!!”

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ