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【現在、ザリバン高原地帯14時05分①】


 必要な情報は得ることが出来た。

 もう、この男には用がない。

 あとは、ゆっくりと、おとなしく休んでもらえればいい。

 俺が立つと男の顔が、まるで恐怖でも感じたように歪んでいくのを不思議に思いながら、その場を離れた。

 草の中に潜り込み、ある物を探していて、急にあることを思い出す。

 首を伸ばして、辺りに人が居ないか確認する。

“ここに居た人間は自分で殺したというのに”

 ズボンのベルトに手を掛けてそれを解き、パンツごと膝までおろして座りなおす。

 そう。

 おしっこをするために。

 男たちのように、立ったまま簡単に済ませられない。

 いちいちズボンを脱いで、おしりをさらけ出す必要がある。

 いくら戦場経験が豊富にある俺でも、男たちの見ている所で、あきらかに男の物とは違う白くて丸いお尻を見られるのは恥ずかしい。

 最後の一滴を絞り出すと、ふーっと幸せのため息が漏れた。

 戦うのに夢中になって忘れていた時もあったけれど、ずっと我慢をしていた。

 平たい葉っぱを千切って、残った雫を拭く。

 下半身だけだけど、こうしてのんびりと肌が直に空気に触れる感覚は気持ちいい。

 ほんの少しそのままの恰好でいたあとで、パンツとズボンを上げた。

 それから草むらの中から傷に効く薬草を見つけ、出来るだけ多くの葉を取りポケットに入れて捕虜の男のところに戻ると、男がビクッとして俺の顔を用心深くその動きを目で追う。

 その視線には構わず、俺はポケットから取り出した薬草で俺が傷つけた胸の傷を手当する。

「ありがとう」

 何故か男に、礼を言われて驚いた。

「すまん、俺が傷つけてしまったところだから」

 そういって、謝る。

「いや、俺は君を殺すつもりだった。だけど君は俺を簡単に殺せたのに殺さなかった」

「人質を取るためだからな」

「知っている。だけど情報を得た以上、君は俺を殺すと思っていた」

「それでさっきから俺の動きを見ていたのか。馬鹿だな殺しはしない。だけどお前が言った情報が嘘で、そのせいで俺の仲間が死んだり傷ついたりした場合は、迷わず殺す」

「知っている。嘘は言っていない」

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