【現在、ザリバン高原地帯14時00分】
とっさに地面を強く押すと向こう側に飛び出したのは、俺が今バランスを崩した木の先端。
直径にして約10cm。
タックルを仕掛けてきた男の顔を、飛び出した木の先端が捉える。
当たった力が逃げないように、膝をついて渾身の力を籠めて地面に固定すると強い衝撃が伝わった。
並の人間なら首の骨が折れたかも分からないくらいの、強い衝撃。
起き上がると、俯せに倒れている男。
腕を逆手に持ち、ちょうど十字固めを仕掛けるような形で、仰向けにした。
木にぶつけた顔からは血が流れている。
鼻の骨が折れたのだろう、心なしか曲がっている。
脳震盪を起こして気を失っているうちに、拘束しておかないといけない。
もう一度男を俯せにして、脱がせたズボンの腰ひもで手を縛り、ズボンで足を縛った。
縛り上げるために、さっきの木の棒を利用して膝の曲げ伸ばしが出来ないようにしてから、担ぎ上げ俺が装備を置いたところまで一旦運ぶ。
途中、ズボンをロープ代わりに使った影響で、男の一物がブカブカのパンツから飛び出して、俺の頬をペタンペタンと打つ。
気絶してしまった本人に代わって、俺を攻撃しているつもりなのだろうが、あまりにも非力。
だけども、精神的な攻撃力だけは、あった。
正直、この男を担ぐのが嫌になったから。
脱いだ服を着る前に、ロープでもう一度確りと結び直して気絶している男を起こし尋問した。
「他の者たちは、どこに行った」
男は知らないと答えた。
留守番役に詳しく内容を教えないのは、正規軍でない部隊ではよくあることだ。
だがヤザは、この男に教えて出ているはずだ。
自分たちの欠点と、敵の優れたところを理解して、組織を強くすることを考えているから。
死んだ男の胸に刺さったナイフを抜いて男の胸に軽く刺し「言え!」と言った。
男は、神の名を呼んだだけで何も答えない。
更に力を入れると、ナイフが骨に当たった。
「どこに行った?」
男は震えながら、再び神の名を呼ぶ。
骨に当たったナイフの先を、グリグリと回し、骨を削る。
更に力を籠めようとしたとき、男が言った「お前たちの救援部隊を撃退しに行った。だから、待っても救援は来ない」と。
俺の予想が当たった。
次にRPGと地対空ミサイルを持って行ったかと聞くと、ここにRPGを4門残して、残りは全て持って行ったと答える。
地対空ミサイルは、ここに幾つ残っているか聞くと、もう残っていないと答えた。
RPGの残る2門は何処にあると聞くと、裏に展開した部隊があと2門、救援ヘリ撃墜用に持っていることが分かった。




