表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/234

【2年前、リビア“Šahrzād作戦”⑤】


 エマと一緒にカフェへ入った。

 俺は紅茶にパンケーキを頼んだが、エマが頼んだのはチキンライスとピザ。

 そのチキンライスには、骨付きのモモ肉が一本丸ごと乗っていて、ボリュームの半端なさに驚いた。

「よく喰うな」

「ナトちゃんも、チャンと食べないと、いつ食べられなくなるか分からないんだから」

 そう言いながら「ちょっと味見」と言って、勝手に俺のパンケーキを取って食べた。

「なんで俺なんだ?」

 エマが食事を平らげたのを見計らって、聞いた。

 それにしても、よく食べたものだ。

 エマは紅茶を追加で注文してから、答えた。

「だって、ナトちゃんアラビア語ができるでしょ」

「アラビア語なら、国軍の中にも話せるやつはいる」

 はぐらかせられないように睨んで言うと、エマは諦めたように手を広げて降参の合図をした。

「正直言うと、アラビア語が出来れば誰でも良い訳じゃないの。危険な任務だから」

「それなら優秀なエージェントを連れてくれば良いだろ」

「んー。それはそうだけど……」

 その時、エマの頼んだ紅茶が運ばれてきたので、一旦会話を止めた。

 何故か俺の分の紅茶も運ばれてきたので、頼んでいないと、言うとウェイターのお兄さんから「美女にサービスです」と言われた。

 それを見て、エマが「でしょう」と言う。

 なにが“でしょう”なのか分からないので聞き流すと「私、百合だから、こういう時には思いっきり美女じゃないと駄目なの」

 思わず口に運んだ紅茶を吹き出しそうになった。

「その顔にその体なら、別に百合にならなくても、引く手あまただろう」

 我ながら、言っていて恥ずかしい。

「そりゃあ、今迄何十人も、いやそれ以上の男と寝たわよ。だけど結局行きつく先は、同じ体と心を持った女性。ねえ、ナトちゃん――」

 そう言って、俺の手を握る。

 周りの客がニヤニヤと俺たちを見ている。

「出よう」

 そう言ってエマの手を取って店を出た。

 通りに出て、ぷらぷらと街を歩く。

 時刻はもう四時。

 もう少ししたら、アスル(遅い午後の礼拝)の時間だったので、モスクに向かって歩いた。

 時間が近くなるにつれ、同じ方向に向かう人が増えてくる。

 そして、そのうちの何人かが、俺たちを見ていた。

 エマが馬鹿な事ばかりするから、すっかり有名人になってしまったじゃないか。

 こんな状況で、潜入捜査などできるのか?

 モスクの近くに見慣れた車両が止まっていた。

 VBL装甲車が2台。

 国軍の最後のパトロール。

 ナカナカ良い所に目を付けたつもりかも知れないが、この大勢の中からバラクを見つけ出すのは大変だろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ