【現在、ザリバン高原地帯13時55分】
「誰だ!」
仲間の帰りが遅いことに苛立った敵が、銃を向けた。
裸の俺の姿を見て、まるで阿呆のように一瞬ぽかんと口を開けた。
問題は奴が次にとる行動。
撃ってくるか。
それとも……。
両手を前に広げ、撃たないでと、お願いするポーズをとる。
奴は銃口を俺に向けたまま、用心深くゆっくりと近づく。
のこり2mのところで立ち止まり、俺の周りを回る。
もちろんその間、銃を俺に向けたまま。
「仲間は何処だ!」
言葉は分かる。
だが、一般的な米兵には通じない。
だから首を横にブンブン振って、分からない振りをする。
奴は苛立って、銃を撃つ振りを繰り返し「お前を探しに行った、俺の仲間は何処にいる?」と繰り返した。
俺は中腰になり、相手が撃たないようにお願いするばかり。
もちろん演技ではあるが、この位置からだと確実に死は免れない。
奴が俺の後ろに回って、銃口で腰を突く。
結構用心深い奴だ。
正面やサイドから、それをしてくれれば対応できるのに、後ろからでは難しい。
何度も何度も突かれ、俺は「OK、OK!」とだけ返事をして歩く。
そう、奴の仲間がいた場所に向かって。
案内した先に散らばっているのは、俺の脱いだ服だけ。
奴らの死体は離れたところに、片付けた。
仲間がいないことに腹を立てた男が、俺に銃を突き付けて「仲間はどこに行った!」と迫る。
いつ引き金を引いても、おかしくない剣幕。
「No!No! Now、そこにいた!」
膝をついて必死に懇願するポーズを取りながら、最後の言葉だけアラビア語で答えた。
「仲間が居るのか!?」
「There is one woman who gave me information」
「分かるように離せ!さもないと撃つぞ!」
「One girl!One girl!」
人差し指を立てて言った。
このくらいの英語は、コイツでも分かるだろう。
「あっちから来た!」
分かるようにアラビア語で言って、向こうを指さす。
指の動きに釣られて、男が初めて俺から目を離した。
「今だ!」




