【2年前、フランス傭兵部隊】
特殊部隊として新たに設立されたLéMATは将軍直属の部隊となり、当面小隊規模の運用で初代部隊長にはハンス中尉が就任し、補佐官として普通科連隊からマーベリック少尉と技術士官としてニルス少尉が着任した。
その他に衛生兵として、国軍の第一衛生連隊からジャン特務曹長が転任し部隊は総勢40名。
各分隊は四分隊に別れ、俺は部隊長直属の第四分隊分隊長として配属された。
第四分隊は俺の他に、補佐役としてモンタナ伍長とブラーム兵長。
その下にトーニ、フランソワ、ジェイソン、ボッシュの各上等兵にハバロフ、ミヤンの一等兵が付く9人編成。
それからは出動要請が入るまで、今まで以上に訓練に明け暮れる日々を送った。
ランニングや格闘技は勿論だが、新たなこの特殊部隊で最も重要視されるのが射撃訓練。
狙撃用ライフルから自動小銃に拳銃、それに対戦車ライフルやグレネード弾の精度をとことん追求する。
「いや~射撃訓練は良いねぇ~」
「なにが“良いねぇ~”だよ。外しまくりやがって」
のんきに言うトーニの言葉に、モンタナはもうカンカン。
「でも取り敢えずは、的には当たっているからいいだろ」
「オメーの射撃精度だったら、もし相手が人質を取っていたら任せられやしねえ!」
話を聞いていて、ふと思う。
トーニは何故このリマットのメンバーに選ばれたのだろうと。
ランニングもスイミングも山岳訓練も格闘も、全て全隊員のうちで最下位。
だけど前身の特殊部隊にも居た。
一応、コルシカ島での空挺訓練も受けては居ると聞いたが、この状況では合格したかも怪しい。
「不思議だろう」
トーニとモンタナのやり取りを見ている俺に気が付いたブラームが隣に来て言った。
「ああ」
「やっこさんは、ああ見えても俺たちじゃ出来ない能力がある」
「能力?」
「ああ、奴は爆発物のプロだからな。作る事から解除に至るまでビビらずに正確に短時間でやってしまう」
なるほど、確かにそういうプロが部隊に一人いるだけで任務の幅は広がる。
「ニルスの肩書が技術士官となっているが、彼は?」
「あの人は電気オタクだ。オーブントースターから通信機、パソコンまで何でも直すし、プログラムも出来る。それに意外と射撃や体力系もこなす」
「つまり、小規模ながら爆弾処理班や支援部隊の機能も持つって事か」
「そのようだな」
「つまり、他の特殊部隊と違って、長く戦地に滞在する事を目的としているのかも知れないな」
ポンと肩を叩かれて振り向くと、ハンス中尉が後ろに居てそう言った。
そして、それから1年して俺たちの赴く先が決まった。
その場所は、北アフリカのリビア。
そこには、もしかしたらヤザが居るかも知れないと思った。
 




