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【現在、ザリバン高原地帯13時20分】


 ゴードンとゴンザレスがお湯を沸かして、生き残っているもの全員に珈琲を入れて配った。

 そして最後にコクピットに集まった俺たち6人でそれを飲む。

 インスタントとは言え、久しぶりの珈琲の香りは、まるで麻薬のように緊張していた心を落ち着かせる。

「やっこさんたちにしてみれば、折角餌に食いついたものの打つ手なし。あと少し経てば応援が来るから、このまま静かでいてくれると有難いね」

 と、ゴードンが言う。

「裏に回ろうとした敵の大部分はジムたちが戦車で蹴散らしてくれたし、コクピット側の敵も重機関銃を据えた戦車を軍曹とフジワラ伍長で潰してくれて尻すぼみになったから、折角出て来た正面の敵も攻勢のチャンスを逸したかたちですな」

 とゴンザレスが言う。

 たしかに二方向からの、敵の進出を喰い止められた事は大きい。

 ここに手を焼いていたら、おそらく正面の敵は突撃を仕掛けてきて、突入を許していただろう。

 戦闘は落ち着いているが、見えない森の中の敵が気になる。

「ちくしょう!掃討作戦の手柄は応援部隊に横取りされちまう。その前に折角奴らという餌があるんだから、森のオオカミに喰われちまえば良いのに」

 キムもそれが気になったらしく、怠そうに言った。

 だが、何故かキムの言った言葉が引っかかった。

 餌……応援……オオカミ……。


“餌、応援、オオカミ”


「これは罠かも知れんな」

「罠?」

「そう、俺たちを囮にした罠」

 半信半疑な皆に説明するためと、自分の仮説が正しいのか確認するために地図を広げた。

 地図上から、救援のヘリが降りられそうなところを探す。

 敵は地対空ミサイルを持っている。

 それにRPGも。

 そのRPGは暫く撃ってきていない。

 ヘリには地対空ミサイルを避けるため、ここを中心として半径5キロ以内に近付かないように連絡してある。

 通信妨害をしていた敵にも、その情報は洩れているだろう。

 皆で地図から着陸地点を探す。

 山岳地帯だけに、半径5キロより外での近い着陸可能な場所は少ない。

 見つけ出した着陸地点は、たった3カ所。

 これで分かった。

「恐らく敵はアナコンダ作戦、タクル・ガルの戦いの再現を狙っている」

(※タクール・ハーの戦いともいうこの戦いは、2002年アフガニスタン山岳部に潜むタリバン兵掃討作戦前哨戦として、3000mの尾根でSEALsを乗せたヘリが敵の攻撃に会い墜落し隊員たちが孤立し、それを救出するために向かった山岳特殊部隊のヘリも落とされ孤立してしまい、結局アナコンダ作戦自体が見送りとなった戦い)

 この3カ所に地対空ミサイルなどを配備して待ち構えれば、救助部隊を殲滅でき、その残存兵を救助しようとするヘリもまた餌食にできる。

 そして長い持久戦になれば、この輸送機に立てこもる俺たちも疲弊してしまい、攻め落とせると言うわけだ。

 直ぐに無線機を取り、敵の待ち伏せが予想される3カ所の座標を伝え、もっと離れた安全な着陸地点を探すように伝えた。

 しかし、半径10キロ以上も離れてしまうと、ここへ到着するまでに最も楽なルートでも5時間以上は掛かる。

 当然、この山並みの地形を知り尽くす敵の縄張りの中にあって、ゴール地点の分かっている進軍は待ち伏せに会う危険性も高いだろう。

 そう考えると味方の救援部隊の到着は、更に遅れて夜になるとみていいだろう。

 少ない人数での持久戦は不利だし、今はまだ無理をして戦ってくれている負傷兵たちの殆どは、体力が切れてくるだろう。

 暗視スコープがあると言っても、360度の範囲を6人で監視するのは難しい……いや、もしかすると5人になるかも知れない。

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