【現在、ザリバン高原地帯13時10分】
遮蔽物が完成してヤクトシェリダンを裏に引き上げた。
戦場は膠着状態。
あれほど攻勢に出ていたというのに、戦闘機の支援を受けてからというもの一気に戦意が喪失してしまったかのように静まりか照っている。
いつの間にか銃声も止んだ。
「どうして敵は撤退しないんでしょう」
コックピットに集まったとき、ゴンザレスが言った。
空からの支援があった以上、救援部隊が来ることは分かっているはず。
そして、その時間が近い事も。
退却もしなければ、新たな攻勢もして来ない。
何かを待っているのか、時間を稼いでいるのか、それとも打つ手がないのか?
待っているとしたら何か?
増援部隊の到着、それとも新たな兵器。
時間を稼いでいるとしたら何か?
打つ手がないという選択肢なら、俺たちにとって好都合だが、ヤザがまだ生きているならその希望は薄いだろう。
本来ならやはり偵察部隊を出したいが、フジワラが重傷を負ってしまい、レイも負傷している状況では難しい。
五体満足で戦える兵士が7人から5人に減った。
そしてもしこの静寂が、俺たちを誘い出そうとする作戦だとしたら、待ち構えている敵の思う壺だ。
膠着状態を利用して、弾薬・食料・衣料資材の確認を行った。
「自動小銃用の銃弾は一人400発以上あります。あとは手榴弾が50個で問題はないと思いますが、軽機関銃用の弾帯が残り少なく、重機関銃用の12.7mm弾は各4基あたり200~250発と残り僅かです。戦車用の法砲弾も残り4発と少ないですが、燃料はまだ2/3は残っています。以上、兵器関連」
「食料の方は、レーション(携帯用食料)は人数が少なくなった関係で1週間分ほどありますが、水の方は大凡3日分と少ないのが現状ですが、節約すれば5日は持ちます。以上、食料関連」
「医療用機材の方は、消毒用のアルコールが僅かにあるのと、錠剤の鎮痛剤は未だありますがモルヒネと点滴類は有りません。また、今の所急重傷者に容態の変化はなく落ち着いています。これまでの戦闘で、軽症者として戦闘に参加していた者のうち5名とフジワラ伍長が新たに負傷離脱しています。以上、医療関連」
ジムとゴンザレス、それにゴードンの三人が再度調べてくれた在庫状況を報告してくれた。
「敵の新たな攻勢が無ければ、3日間は持つという判断でいいか?」
「「「大丈夫です」」」
と三人が答える。
敵の出方が分からなくなってしまい、今後は様子を見るしかない。
なにも無ければ、救助部隊が到着するまで籠城を続ける。
籠城と言っても、もうあと30分も有れば応援のヘリが到着し、それから二時間程度で麓の基地に到着する。
今まで張り詰めていた気持ちが、少しだけ緩んだ。




