【3年前、入隊①】
結局入隊の筆記試験も全てパスした。
なんでも、事務側は最終的に士官用の問題まで投入してきたらしい。
そして、それが採用に当たりまた問題になった。
つまり入隊時の階級。
士官用の問題をクリアした場合、通常は准尉と言う士官候補生から始まるが、素性の確かでないしかも女性隊員をいきなり士官として雇うのは問題があった。
だからと言って、士官試験をクリアしたものを一般兵として入隊させるのも問題があり、なによりも一般兵の場合は風紀上の問題も複雑になる。
結果的に、俺に与えられた階級は三等軍曹。
それから半年間、コルシカ島の基地で空挺部隊の過酷な訓練が行われた。
訓練中、多くの落後者が出た。
落後した者達は、基本的に前所属部隊に戻る。
つまり、この訓練と言うものは新兵用の訓練ではなく、特殊部隊選抜用の試験。
当然、俺にとって戻る部隊はないから、落後することイコール除隊となるわけだ。
屈強な男の兵士に混じって、重い荷物を背負ったまま山岳地帯を走り回る訓練や延々と泳ぐ訓練、それに超低空からの落下傘降下訓練。
山と海での訓練では大量の落後者が出たが、落下傘降下訓練では事故で二人死んだ。
補助落下傘を開くのがコンマ5秒も遅れると、ブレーキが殆ど効かない状態で地面に叩きつけられる。
訓練中の事故とは言え、仲間の死は辛い。
教育隊の上官からは、いつも嫌になったら除隊しても良いと言われていたが、俺は振り落とされない限り除隊するつもりはなかった。
そして訓練の全工程を全てクリアしてパリに戻ってきた。
配属は、新設される独立特殊部隊。
この部隊員は全て俺が経験してきたコルシカの訓練をパスした者達の中でも、特に優秀か一芸に秀でている者たちが集められた傭兵最強部隊。
今日は、その部隊配属を前に部隊長と面談するため、半年前に来た部屋で待たされていた。
俺の前には事務長のテシューブ。
相変わらず落伍しなかった俺に対して、あからさまに不機嫌な表情で部隊配属の手続きをしていた。
ドアをノックする音が聞こえ、一瞬ハンスかと思って振り向くと、そこには面接時に居た将軍が「遅れてすまない」と言って入って来た。
そして将軍から部隊の概要を説明され、それから別室で控えている部隊長が待つ部屋に案内された。
部屋のドアの前で、将軍は「ここからは君一人で入りたまえ」と言うと、ニッコリ笑って廊下の向こうにゆっくりと歩いて行った。
中にどんな奴が俺を待っているのだろう?
ドアをノックする前に、深呼吸をしながらそう思った。
ノックをしようとする自分の手が、若干手震えていることに気付く。
コルシカでの半年に及ぶ訓練よりも、ハンス達と過ごした一週間を思い出していた。
“コンコン”と二回ノックする。
部屋の中から「入れ」と声がしたが、その声は俺の希望していた声ではなく、もっと野太い声だった。
仕方ない、自分で選んだ道だ。
そう言い聞かせて、ゆっくりとドアを開けた。




