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【現在12時40分、ザリバン高原地帯】


 なるべく森の中の敵から見えにくくなるように、戦車の影に沿って走る。

 それでも、近くを弾の通り過ぎる音が幾つも聞こえた。

「そろそろ伏せるぞ」

 そうフジワラに言って、草むらに身を沈める。

 直ぐにドーンと言う爆発音。

 爆発で吹き飛ばされた破片が白い煙の尾を引きながら、物凄いスピードで右横を突っ切って行く。

 戦場では運の大きさが生死を分ける。

 伏せた位置がもう少しだけ右に寄っていたら、俺たちはあの破片に切り刻まれていた事だろう。

 爆発に気が付いた何人かの敵兵が身を起こし、後ろを振り向き、そのうちの何人かが俺たちに気付く。

 そしてその何人かが、俺たちに撃たれるかゴードン達に撃たれ、運の悪い何人かが戦車の破片の直撃を受けて草むらに沈んだ。

 燃え上がる戦車では搭載していた砲弾による誘爆がはじまりドンパチと賑やかになり、高原に進出した敵兵の何人かが後ろを気にして振り向き、俺たちに気が付き、そして撃たれる。

 そろそろ航空支援も始まる頃。

 急がなくては味方の航空機による機銃掃射の巻き添えを喰らうかも知れない。

「突っ切るぞ!」

「OK」

 フジワラを担いで走るには、ボディーアーマーとヘルメットが邪魔だったので、その場に脱ぎ捨てた。

「GO!」

 フジワラは撃たれた方の足は使えないが、必死にケンケンして走る。

 それでも姿勢を低く出来ないので、いい的になる。

 右手でフジワラを支えているので、応戦は左手に持つ拳銃のみ。

 直ぐに18発撃ち切ってしまった。

 空になった拳銃を投げ捨てて、少しは軽くなったが、もう応戦は出来ない。

 あとは敵の弾が逸れてくれるのを願うばかり。

 反撃しない敵に対しては、余裕をもって照準が合わせられるので、今までより弾丸の風切り音が煩い。

 敵の武器がAK-47だった事だけで命が繋がっているようなもの。

 AK-47は、反動が大きすぎて、狙った的に当てるにはコツがいる。

 ましてやコピー品ともなると、狙えば狙う程当たらない。

 しかし、いつまでこの幸運が続くのか……。

 不意にフジワラに引っ張られて倒れそうになる。

「どうした!?」

「背中に弾が当たった」

 直ぐに走るのを止めて身を伏せた。

 幸い、フジワラはボディーアーマーを着ていたから貫通はしていないが、ダメージは相当あるだろう。

 ほんの十数センチ横にずれていたら、俺に当たっていた。

 輸送機迄の距離は漸く2/3まで来たところ。

 だが、これから先は敵の前を進む事になるので、いい的になってしまう。

「軍曹、俺を置いて行ってくれ」

「馬鹿!味方の機銃掃射を喰らうぞ」

「でも、このままでは共倒れだ。俺が軍曹の命令通り動かずに、あそこに長居し過ぎたせいでこうなった。責任は自分で取る。軍曹はここを迂回して輸送機に戻ってくれ」

「駄目だ、戦場に誰も残して帰らない」

 フジワラは「それじゃシールズじゃないですか」とニッコリ笑った。

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