【現在12時15分、ザリバン高原地帯】
「TIR(熱線映像装置)を使え!」
「了解!」
ジムはTIRを覗き込む。
TIRと言うのは、物体から放出される熱赤外線を可視化する装置で、夜間だけでなく森に潜む敵兵を容易に見つけ出すことが出来る。
「ひょー。いっぱい居やがるぜ」
「発射」
シューッと静かな音が響く。
そしてRPGのように煙は上がらない。
最新型の、このボイジャーミサイルは、音や煙で発射位置を特定されにくいように工夫されたミサイル。
相手に対して直線ではなく、ミサイルを回り込ませて撃つことも出来る優れもの。
だけど今日のような状況では、その二つの特徴は意味をなさない。
俺が二発目を装填し終えた頃、ドンと言う爆発音が響く。
「軍曹!こりゃあナカナカ効果ありです」
「よし、続けて行け!なるべく密集しているところを狙って数を捌け」
「了解!」
敵兵の命や、その家族のことなど考える余地はない。
殺さなければ、こっちが殺される。
そして俺たちが負けると、また中東だけでなく各地で無差別テロが繰り返されて、平穏に暮らしている市民が犠牲になるのだ。
俺とジムは、容赦なく敵を攻撃した。
それはまるで蟻を潰すかのように。
4発目のボイジャーを撃ち終わってジムと別れるとき、あまり調子に乗らないように注意した。
これだけの破壊力を見せつけたからには、敵のRPGの攻撃を一手に受けることになるだろう。
だから観測員にも、RPGの攻撃と背後からの攻撃を注意するようにと注意して、ジムにもその指示に従うように命令した。
強力な武器を持つ者は、攻撃に夢中になり過ぎて防御を忘れるから。
ヤクトシェリダンから飛び降りて、輸送機に向かって走る。
幾つかの弾の通り過ぎる音の中を、全力で駆け抜けた。
ハッチに辿り着くと、後部ハッチに居るはずのフジワラが居なくて、そこにゴンザレスが居た。
「コックピット側がヤバそうです!」
「分かった!」
コクピットに向かうと、レイが腕を負傷して倒れていた。
「状況は!?」
「かなりヤバい!コクピット正面は戦車が飛び出して破壊されたせいで、防御が薄く、視野も狭いからかなり攻め込まれている。レイは身を乗り出したところを撃たれた」
レイの止血をしている俺の横で、ゴードンが言った。
一瞬背伸びをして直ぐ伏せた。
なるほど、敵は撃たれやすい正面を避け、左右に展開し始めて、かなり近くまで来ている。
「フジワラ、俺と一緒について来い!」
「了解!」
「これから俺たち二人で、シェリダンⅡの所まで行くから援護をしてくれ」
「無茶だ!だいいち動かない可能性の方がはるかに高い」
ゴードンが止めようとする。
「動かさない。とりあえず行って帰って来る間、援護を絶やさないように頼む」
そう言って、コクピットを降りた。
「俺は乱射しながら突っ走る。フジワラは俺の20メートル後を援護しながら付いて来い。戦車に着いたら砲弾のカバーを外し、そこに手榴弾をセットする。だから手榴弾1個は戦車に着くまで残して置け」
作戦を伝えながら、何人か狙撃して倒す。
「行く!!」




