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【3年前、フランス傭兵部隊入隊試験⑪】

「今日は、ここに泊まれ」

 案内されたのは守衛室の二階。

 そこには無線室と宿直室があった。

 ハンスが案内をしてくれた。

 無線室へは予め登録されている者しか入れない。

 セキュリティーはカメラによる本人確認と、センサーによる生命個体判別の二つ。

 死んだ状態ではドアは開かない。

 無線室では非常時以外は、主に各国へ派遣されている部隊からの定時報告を受ける役割で、非常時にはこの宿直室が全部埋まる。

 宿直室は六部屋あるが、通常時は一部屋しか使っていない。

 今は、通常時だから平和と言うわけだ。

 基本的には一部屋を二人で使うことになっているから、ベッドは硬い二段ベッド。

 君の場合は、ひとりで使っていい。

 シャワー室は、奥に一つだけ。

 もちろん女性用はない。

 そしてトイレは、ここ。

 これも同じ。

 洗面所はこのトイレにある手洗いを使う。

 化粧の最中に、誰かが小便しに来ても気にせず化粧を続ければいい。

 食事は、朝と夜この食堂で食べる。

 そして、この食堂は守衛のミーティングにも使われるから、ここで寛げるのは朝と夜のだけだ。

 そしてお前が使う部屋は、ここ。

 開けられたドアの先には二段ベッドと一組のテーブルと椅子が備えられた簡素な部屋だった。

 クローゼットはないが、その代りハンガーが有るから、服はそれに掛けろ。

 電話は備え付けのこれを使う。

 二階のスペースでは電波が遮断されているから携帯電話やトランシーバーは使用できない。

「なにか質問は?」

 この赤いランプはなんだ?

 ベッドの上に設置されているライトが気になって聞いてみた。

 これは無線室と連動していて、無線連絡が入る度に点灯する。

 ただ泊まるだけの君には、厄介な代物だろうが、切ることはできないので我慢してくれ。

 他には?

 ハンスの説明は分かりやすかったから、このスペースに関する質問はなかった。

 ただ、入隊試験の結果がいつ出るのかだけが気になった。

「結果はいつ出る?」

「まだ出ない」

 ハンスは少しだけ困った顔をしたような気がした。

「明日から筆記試験だ」

「明日から?」

「そう。これは食事の時に改めて話す。結果は旨く行けば一週間後。それまでは、ここがお前の宿舎だ」

 ハンスは腕時計を見て、一旦部隊に戻ると言った。

 そして18時10分に下に車をまわすから、外出できるようにしろと言って出て行った。

 ハンスが出て行って、マズイことに気が付く。

 いままで野宿やネットカフェで暮らしていたので、寝間着を持っていない。

 共用のスペースがあるということは、他の人間と出くわすということ。

 下着姿でノコノコと歩いていて、欲情した男が襲ってきて怪我をさせてしまっては元も子もない。

 でも、考えても仕方がない。

 このために寝間着を買う程のお金の余裕など残っていないのだから。

 とりあえずバッグを開き、写真を取り出して机に置いた。

 サオリとミランと一緒に撮った、思い出の写真。

 写真に写るサオリの顔を指でなぞり、しばらく見つめて、それからベッドに横になる。

 ここに入隊して、お金をためて日本に行く。

 そして……。

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