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【3年前、フランス傭兵部隊入隊試験⑥】


「あと10秒、ファイト!」

 トーニの合図で俺は動いた。

 先ずパンチ。

 案の定、ハンスは俺の繰り出したパンチに誘われるように上体を前に出してきた。

 次は、この腕を素早く折りたたんで足でジャンプするようにエルボーを撃ち懐に飛び込む。

 胸に当たる寸前で、ハンスが俺の肘を受け止めた。

 俺は、まんまとハンスの懐に飛び込むことが出来た。

 ここで思いっきり背筋を伸ばせば、頭頂部がハンスの細い顎を捉える。

“勝った!!”

 背筋を伸ばし、勢いよくジャンプする。

 ハンスのダメージはモヒカンや、黒い男よりもはるかに大きいだろう。

 だけど、それは仕方がない。

 相手が強ければ強い程、俺のパワーはそれを上回るのだから。

 伸ばされた体が心地よく宙を舞う。

 だけど、ハンスの顎には未だ届いてはいない。

“いったい何故?!”

 宙に浮いた体が反転して下を向くと、そこに居るハンスが俺を見上げている。

 トーニや、ギャラリーさえも。

 俺のエルボーを受け止めるタイミングで、逆に俺の懐に潜ったのだ。

 それに気が付いた時、俺は俺自身の上へ突き上がる力と、それを補助するハンスの僅かな力によって高く宙に舞いあげられたのだ。

 入り口付近で手当てを受けていたモヒカンと黒い男が口を開け、驚いたように俺を見つめている。

 やがて体は上向きになり、俺は畳に打ち付けられるのを恐れて、天井に貼られたワイヤーに手を伸ばす。

 到底掴める距離でもないのに。

 最後は、そのまま畳に打ち付けられていた。

“動けない”

 ハンスの手がスーッと伸びてくる。

 俺はその手を、胸の前に手繰り寄せるように受け止めて聞く。

「なぜ分かった。さすがだぜ、まさか逆に潜り込まれるとはな……」

 ハンスは何も言わず、はにかむように笑った。

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