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***最終回特別企画【男子のロッカールーム】***


 シューティングゲームの後、バーベキューを楽しみながらの飲み会も終わり、汗と油煙に汚れた体をサッパリするためにシャワーのあるロッカールームが解放された。


「チェッ、てっきり優勝してRAIDに一泡吹かしてやれるとお思っていたのに、なんだよ2人して足を引っ張りやがって!」


 トーニが怒っているのは、RAIDの圧勝に終わった団体戦の事。

 ハンス、ナトー、モンタナ、ブラーム、フランソワの5人で挑んだ団体戦では、ブラームとフランソワの二人が絶不調で、足を引っ張る形となりエマたちの混合チームにすら負けそうになったこと。

 もっとも、その二人と似たような成績で終わったモンタナについては言及されていないのは彼が自己ベストに近い成績を出したからではなく、ブラームとフランソワの二人に対して期待値が低かったのは言うまでもない。


「だいたいオメーら二人共、パリでの事件が終わって以来、気が抜けているぞ! なあ、モンタナ」

「ああ、確かに。訓練中も、どこか上の空ってぇ言う時があるし。今日だってトーニが言う通り、二人がいつもの調子ならRAIDに勝っていたんだぜ。いったい、どうした?」


 トーニとモンタナに責められても、ただ情けない表情を見せて俯くだけのフランソワを見かねたジェイソンとボッシュが口を挟む。


「トーニ、勘弁してやってくれ。アニキ(フランソワ)は、あの日モーリーホテルにナトーを乗せて行った後からおかしいんだ。分かるだろ?」


「分かる?? 何のことでぃ。俺にはちっとも」


「自分のバイクにナトーを乗せてみたところを想像してみろ、屹度トーニだったら、もっと重症になるはずだぜ」


「俺のベスパに、ナトーが……」


 俺様の母国イタリアを舞台にした名作映画『ローマの休日』ばりに、俺のベスパにナトーを――身長170㎝の俺の膝の上に、身長176㎝のナトーを乗せてローマの街を案内する……「駄目だ、前が見えねぇ!」


「馬鹿! 誰が前に乗せろと言った。普通バイクに乗せるのは後ろだろうが!」


「分かってっらい!」


 俺様の母国イタリアを舞台にした名作映画『ローマの休日』ばりに、俺のベスパにナトーを乗せる――

「確り摑まっていねぇと、振り落とされちまうぜ。なにせ俺の運転はレーサー並みに荒いからな」

『ええ、こう?』

「おいおい、あんまり下の方を持つんじゃねぇ。シフトレバーが出て来てしまうじゃねーか」

『じゃあ、こう?』

「ああ、そう。それでいい」

 角を曲がる度に俺の肩にしがみ付いているナトーの綺麗な顔がチラチラ見える。

『怖いわ……』

「心配すんな。どこも俺さまの庭だ」

『たくましい……』


 トーニはニヤニヤしながら「まあ、わりい気はしねえな。だからって、どうなんでぃ」と、ジェイソンとボッシュを睨む。


「トーニ。お前、結構可愛いところあるな。でもよぉ、女をバイクの後ろに乗せるって事は、もっとグッとくるところがあるだろ普通」


「グッとくるところ?? 甘い、と息……?」


「違う、違う! 物理的にグッとくるところ!」


「物理的に――、……む、む、む、むねーっ?!! てめーフランソワ!」

 気が付くなり、フランソワに飛び掛かろうとするトーニをジェイソンとボッシュの二人が止めた。

「ちきしょー! 好い思いしやがって! そりゃー訓練にも影響出るのは間違いねぇ。……ところで、ブラームお前はどんな好い思いをしたんだ? 俺様の知らない所で」


「ブラームは物理的にはいい思いなんかしていねえよ」

 今まで傍で聞いていたパリ警察のミューレが、ロッカーにもたれたまま言った。

「そいつはナトーとメヒアとの、軽い下ネタ混じりの話を聞いただけ。ただいつも女として認識しないように努めていたから、意外に純情なブラーム坊っちゃんとしては刺激が強かったのかも知れないな」


「ブラーム。てーめー……」


「まあ、そうカッカするなって。ちなみに俺はメヒアに残っている肺の方を撃たれて、ナトーが俺が死んでしまうと勘違いしてくれて、あの暖かく豊かなバストに抱き寄せられたって言うわけだ。おまけに少しだけ調子に乗って揉んだらナカナカ良かったぜ、そのあと思いっきりぶん殴られたけれど……」


「なに~~~~~~~っ!!!!」


 トーニの顔は真っ赤。

「まあ、そう怒るなよトーニ。 俺を含めた3人共、ようは肝心な時にナトーの傍に居たからこその“特典付き”ってことなんだから。その場に居られなかったお前さんは、もっと努力する必要がある」


「チキショー! フランソワ、ナトーの胸は柔らかかったか?」

「ああ、それにデカかった」

「ブラーム、ナトーの話はグッときたか?」

「ああ、エロかったぜ」

「現場から離れていた俺にとっては、いい土産話ってことかぁ、辛いよぉ……」


「まあ、諦めるんだな。お前らの部隊ではナトーは“男”って事になっているんだろ。それに恋をしたら“ゲイ”って事になっちまうぜ」


「ゲイでも何でもいい。俺は、俺はナトーが大ス……」

 トーニが大声で叫びそうになったのを、フランソワとブラームが口を押えて止めた。

 こんなことテシューブやメエキに聞かれでもしたら、ナトーの立場が危うくなるから。

「いいか、トーニ。ナトーは男だ! お前も言え!」

「ナ、ナトーは男……」


 ガチャ。

 いきなりロッカールームのドアが開く。

 一瞬、これまでの会話がテシューブの耳に入ったのかと凍り付く一同だったが、入って来たのはニルス少尉。

「あれ? ナトーは?」

「ああ、ナトーなら、エマの部屋に行って、今夜はそこでお泊りだとよ」

「ああ、そうだったね」

「なんか用か?」

「いや、特にない。じゃあ」

 そう言ってニルスは戸を閉めた。

「しっかし、ナトーはエマと仲が良いな」

「羨ましい」

「でも、女同士だぜ」

「だったらレズか? ……」


「ここは、どこだ?」

「部隊内」

「部隊内では、ナトーは?」

「男……」


「チキショー!! ナトーの奴、俺たちを差し置いて、DGSEのあの爆乳エージェントを!」


 悔しがる一同。


 おあとが、宜しいようで――。

今年の2月から連載を始め、読んで下さった方々誠に有難うございました。

パリのエピソードを入れたせいで、次ぎのエピソードをかなり連続して入れないといけなくなり、今までのように現在と過去の混在する形が維持できなくなり、時系列に添う形式にせざる負えなくなりました。

どうせ時系列にするなら、最初からそうした方が良いと思い、勝手ながら一旦ここで終了します。

今まで読んで下さり有難うございました。

また時系列版も宜しければ読んでみて下されば幸せです。


「おいおい、マジかよ。そうなると俺さまとナトーとの恋バナはどうなるんだ?」

「えっ!? トーニとナトちゃんの恋バナ??」

「まさかアンタ、書かねえつもりじゃねーだろーな……」

「あっ、いえ、そっそんなことは……」

「しっかり書いてくれねえと、承知しねーぞ」

「はっはい(;^_^A」

 と、言う事で時系列版でまたお会いしましょう♪


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