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【Is Paris burning?(パリは燃えているか)㊳】


 空を黒く染めているのは、鳥でもなければ虫でもない。

「あれは……ドローン!? でも、なんで?」

「ぼけっと見ている場合じゃない。もしもドローンに何らかの発火装置が付いていたら――」

 ハンスに言われて、慌ててイーゼルケースに隠し持っていた狙撃銃を取り出し、無線でベルたちにも応援を頼んだ。

「ベル! ドローンを撃ち落とせ!!」

 上空を飛び回る数百機のドローン。

 それでも最初の数機は簡単に撃ち落とすことが出来たが、相手が撃ち落されることに気が付いて直線的に飛ばなくなってからは厄介だった。

 予想できないほど、上下左右に小刻みに動き回るため撃ち漏らしてしまう。

 その分、相手のドローンも進行速度は遅くなるが、それを撃ち落とすことが出来るのは俺の他にはハンスとベルの数人だけ。

 撃ち漏らしたドローンたちが次々と頭上を通り抜け、ノートルダム大聖堂に向かう。

 このままでは、到底防ぐことが出ない。

「妨害電波は出せないのか?!」

 リズに妨害電波の依頼をしてみた。

『ドローンの操縦に使われているのは無線用の電波じゃなくて携帯だから! 一応やってみるけれど……』


 窓の上を通り過ぎて行く無数のドローンを怪訝そうに眺めるメヒア。

「ドローン!?」

「そうです。あの玩具のドローン大会を主催しました」

 楽しそうに答えるジュジェイの言葉に、メヒアの表情が更に厳しくなるのが分かった。

「それで……?」

「ああ、誤解しないでください、遊びじゃないですから。あのドローンたちのゴール地点はノートルダム大聖堂。そして、それぞれのドローンには認識票と称して超小型の発火装置を付けていますから、辿り着いたドローンの発火によって大聖堂は火に包まれます」

「あんな、ちっぽけな玩具で……か?」

「侮っちゃいけませんよ、確かに小さな玩具ですが、リチウムイオンという高エネルギーなバッテリーを積んでいます。それが何機も発火装置によって燃やされる事で大きな火に替わるんです。見ての通りドローンは小さくて動きが速いから、撃ち落とすのは困難。……言ったでしょっ、たとえ100輌の戦車、100機の戦闘機、1000人の兵士が出て来てもこの作戦を止めることはできないと」

 ジュジェイは笑いながら言った。

 その言葉の中には己の能力に満足する気持ちの他に、その能力に付いて行けずに狙撃銃でドローンを落そうとやっきになっている警備の兵士達、それに頭の悪いメヒアの事も笑っているように感じられた。

 その事に気が付いたのか、それとも気が付かなかったのか、メヒアは黙って窓の外を見て葉巻に火を付けた。

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