【Is Paris burning?(パリは燃えているか)㊲】
「アジトが空っぽってどういうことだ? ちゃんと腕時計のGPSで確認していたんじゃなかったのか?!」
『ちゃんと腕時計のGPSで確認はして入ったわ。でも、それが……』
「それが?」
『アジトの中には行ってみると、その腕時計が椅子に置いてあるだけなの』
「椅子に? テーブルじゃなくて? 椅子の何処?!」
『椅子のクッションの下よ』
クッションの下と言うことは、隠したと言う事だろう。
レイラの身に何か危険があったのか、それともそれが近づいて来ていたのかどちらかだろう。
レイラが時計を隠したからには、屹度何かのメッセージが残されているはずだと思った。
「エマ。時計の状態を教えて」
『時計の状態……えーっと、止まっているわ』
「壊されているの?」
もしも壊されているとすれば、それはきっと時計の秘密がバレたということ。
『いいえ、壊されてはいないわ。リューズが引っ張られて止めてあるの』
「時間とかは、どうなっている?」
『えっと、時計の針は8時で止められていて、曜日はMだから月曜日、日にちは24日になっているわ』
今日は13日の金曜日だから、明らかに何らかのメッセージが隠されている。
時間の8時は恐らく方角だろう。
通常は進行方向に対しての方角を指すが、この場合は北を0時とした方角だと思う。
南西の方角を見ると、ビルが何棟も見える。
Mは、頭文字にMの付くビルやホテルを指すのではないか……そして24は、階数。
直ぐにリズに連絡をした。
ノートルダム大聖堂付近の南西にMの頭文字の付くホテルがないか。
直ぐにリズから回答があった。
『南東にあってノートルダム大聖堂の見える頭文字にMの付くホテルは5棟よ』
「じゃあ、その中で24階に特別室があるのは?」
『えっと、ちょっと待って――それならモーリーホテルが最上階の24階に特別室があるわ』
「それだ! 屹度レイラは、そこに居る!」
丁度その時、俺たちの無線を聞きつけたハンスが駆けつけて来てくれた。
「ハンス。どうして?」
「ナトー、行ってやれ。ここは俺が見る!」
「でも……」
「折角、リビアで助けた命だ。みすみす敵に奪われたくはないだろう」
「ありがとう! じゃあ……」
そのとき急に空の向こうからブーンと言う変な音が聞こえた。
見上げてみると、南西の方角から無数の小さな黒い塊が飛んで来ていた。
「あれは何!?」




