【Is Paris burning?(パリは燃えているか)㉗】
次の日、部隊の朝の朝礼に出てみると、いつも居るはずのモンタナ達が居ない。
居ないのはモンタナ、フランソワ、ジェイソン、ボッシュと、それにトーニの5人。
「何かあったのか?」
ブラームに聞いてみたが、彼は「食あたりで病院に行ってくるらしい」と歯切れの悪い返事を返してきただけだった。
モンタナ達4人だけなら俺も信じたかもしれない。
だけど、その中にトーニが居るのが、なんとも怪しい。
嫌な予感を胸に射撃訓練をしていた。
3発目の的を立て続けに10点から外したとき、ハンスに注意された。
「よそ事を考えるな! お前が外すような的じゃないぞ」と。
その時、向こうの方から秘書官のメェキが慌てて走って来るのが見えた。
「大変だ! ハンス中尉にナトー二等軍曹、直ぐにDCRIの本部に行ってくれ!」
「何があった?」
表情を変えずにハンスが聞く。
「モンタナ達がDCRIで大暴れして、手が付けられない!」
“やっぱり何かあった”
俺の嫌な予感は当たった。
「まったく、しょうがない奴らだ。ナトー直ぐ行くぞ! ブラーム、あとは頼む」
「了解しました」
何となくブラームの顔が笑っているように感じた。
ハンスのMAZDAに乗ってDCRIに向かう。
この車に乗るのは、入隊試験前に街に買い物と食事に行ったきりで、なんとなく懐かしくて嬉しかった。
「昨日、何があった」
「報告した通りだ」
「それは知っている。だが、その報告に隠されている事もあったはずだ」
「なんでもお見通しって訳だな」
そう言って、昨日あった事を包み隠さずハンスに話した。
「実は昨日、トーニが頭が痛いと言って、昼で訓練を抜けた。お前の事が気になったのだろう、昼休みの時に駐輪場の前を通ってみると、あいつのベスパがなかった」
「じゃあトーニは……」
「そう。屹度お前の後を着けたのだろうな。そして今日だ。何事も隠すな」
「すまん」
「まあいい」
ハンスのMAZDAがDCRIの本部に着くと、直ぐに守衛が駆けつけて20階にあるオフィスに案内された。
ドアを開けてみると部屋は机が引っくり返って、資料らしき紙が散乱して無茶苦茶。
それにDCRIのエージェントが10人ぶっ倒れていて、こちらもジェイソン、ボッシュの2人が倒れていた。
トーニは逃げ回っていたけれど、その前と後ろを2人ずつに挟まれて危機一髪だったので思わず加勢して、4人を片付けてしまう。
モンタナとフランソワはまだ戦っていたが、もうフラフラで取り押さえられる寸前だった。
「こらぁーお前たち!!」
いつになくハンスが激しく怒鳴り、モンタナとフランソワに群がる10人DCRIのメンバーの方へ向かう。
さすがにハンスに怒鳴られて、ビビるモンタナとフランソワ。
ここに来て既に4人倒してしまった俺も、正直ビビった。
ところがハンスは、俺たちには目もくれず、囲んでいたDCRIの10人を次々に投げ飛ばしながら「俺の部下に手を掛けるな!」と大暴れ。
“いったい何が??”
俺が驚いている間に、その10人を蹴散らして、そのまま部屋に立てこもってしまった。




