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【現在、ザリバン高原地帯07時20分】


 森の奥からキースのバイクの音が聞こえてきた。

 さすがに元プロのライダーだけあって、思ったより早い。

「只今帰りました」

「ご苦労! 無電は確認したが、本当のところ状況はどうだったか」

「はい。カナダ軍は、現地の地理に詳しいゴードン上等兵とジム一等兵の指示に従い、北の崖と森の斜面沿いに配置して、出て来ようとする敵のみに対応しているので銃弾には余裕があるそうです。逆に敵の方がもうそろそろ弾が尽きてきたのではないかと、カナダ軍の中尉が言っていました」

 ゴードンとジムの張り切っている姿が目に浮かぶようだった。

 そして、たとえ僅かな時間だとしても、その経験を生かしてくれているカナダ軍の指揮官にも頭が下がる。

「キース。たしかオートバイで早く走るには“道を読む”のがコツだと言っていたな」

「はい。道に出来た轍は勿論、石や路面の濡れ具合、斜面の角度を読みながらベストのラインを選んで走ります」

「ここを見て、どう思う?」

 俺は崖を指さした。

「たしかに、目の前が開けていて周囲の地形から見ると下に降りるのはベストのように見えますが……」

「が……とは?」

「いえ、他のルートを探してみたわけではないので何とも言えませんが、明らかに見晴らしが良過ぎます。こんな所を通るのはヤギくらいなものです」

「ヤギか」

 キースの例えが可笑しくて笑った。

「もしも君がオオカミだったら?」

「こんな所は通りません。もっと暗いところを探します」

「だろうね――キース、敵はオオカミだ。きっとその暗い道を知っている。敵がその道を通って上がって来る前に、俺たちはその道を知らなければならない」

 崖で遣られていたアメリカ兵たちを思い出すと、たとえ下に強力なトーチカがあったにしても、どう見ても一方的にやられ過ぎている。

 これは挟み撃ちではない。

 三方向から囲まれた可能性がる。

 もしもそれを俺たちが見過ごしていたとしたら、俺たちの運命は全滅したアメリカ部隊の運命を辿ることになるだろう。

 そうならないためにも、戦闘が始まる前に、その道を確保しておく必要がある。

「キース、探してくれ」

「了解しました!」

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