【現在、ザリバン高原地帯06時55分】
「よーし、トーチカに機関銃2丁を据えろ!」
救援ヘリから弾薬を補給してもらったおかげで、久し振りに軽機関銃が使える。
「誰入れますか?」
モンタナは声を殺して言っているようだが、明らかに声が大きかったので注意してから「フランソワ、ジェイソン、ボッシュ、それに普通科から3名。指揮はお前が取れ」
「俺ですか?」
「嫌か?」
「いえ、身に余る光栄と言うか……」
「撃ちまくるのは得意だろ」
「了解しました」
「後衛に普通科の10人をブラームに任せる。俺とハバロフは崖の上で全体の指揮を執る」
「戦闘はいつ頃始まりますか?」
ハバロフが不安そうに聞いて来た。
「早くても8時以降だと思っていいだろう。それまで各員準備を怠るな」
そして腕時計を見た。
時刻は7時。
丁度、イリジウムの通信回線が遮断される時間だ。
計画通り、高原の前線基地から部隊は出発したのだろうか?
そしてキースは無事にカナダ軍に伝言を渡してくれただろうか?
<ザリバン地下壕本部>
地下壕の通信員が叫ぶ。
「イリジウム通信入りました。高原の敵基地部隊出撃、戦車2台を先頭に兵、約100名!」
「いよいよフィナーレが近くなってきたな。ヤザ、出撃は爆破班からの連絡が入ってからだ」
「筋書き通り……って訳か。しかし、こんな地下壕の中に籠っていて、そう上手くいくのか」
「地下壕に籠っているから上手くいくんだよ。今までみたいにノコノコで歩いていちゃあ、今まで通り遣られるだけだ」
「……」
しばらくして、また通信員が叫ぶ。
「カナダ軍の通信傍受。しきりに弾薬の補給を依頼しています」
もう一人の通信員が、それに付け加える。
「通信班から無電。カナダ軍の位置は依然森の端のままです」
「なんで無電なんだ!? 無電を使うと位置がバレるじゃないか。直ぐにイリジウムを使えと連絡しろ!」
「はい……。イリジウム、交信できません!」
「ちきしょう! 通信を遮断されたか」
ヤザがイヤミっぽく言う「敵の反撃が始まったか?」と。
「なぁに、今更イリジウムを切られたところで、時計の針は止まりはしない」
「だといいがな」
そう言ってヤザは指令室を出て行った。




