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【現在、ザリバン高原地帯06時45分】


 俺の名前はキース・レオナルド。

 傭兵になる前は、メキシコ出身のモトクロス選手として、北米で16の時にSUZUKIとプロ契約を交わし18でKawasakiに移籍して、優勝経験はなかったが常に上位を走る“将来性のあるライダー”と注目されるようになった。

 しかし早い反面、怪我も多くて結局一度も優勝できないまま22歳でクビになり、それから活動地域をヨーロッパに移した。

 人工的に作られたコースの多い北米と違って、森や牧場の一部をコースとして改造されたヨーロッパのコースは俺に合っていて、直ぐにYAMAHAと契約を交わし表彰台の常連にもなれた。

 そしてついに夢にまで見たパリダガールラリー出場のオファーが来た。

 その時のことは、今でも忘れない。

 丁度シーズンが始まって3戦目に転倒した時に利き腕の左肩の骨を折り、入院していた時にチームマネージャーがその朗報を持って来た。

“今シーズンは棒に振ったと諦めて、パリダガで再起を掛けてみないか”

 肩のリハビリは思いのほか上手く進まなかった。

 夜も眠れないほどの鈍い痛みが四六時中ついてまわり、利き腕ではない右手では持つフォークやスプーンも上手く扱えない。

 つのる苛立ちのなか、当時付き合っていたガールフレンドが、知り合いから良い薬をもらって来てくれた。

 その薬を飲むと、痛みが取れるばかりか疲弊していた心にも希望が湧いて来てリハビリも苦にならなくなり、思いのほか退院も早くなった。

 高い薬らしかったが、その薬を飲むと練習でも好タイムが出せてチームも早い復帰を喜んでくれていた。

 だが、それも続かなかった。

 ガールフレンドが買ってきてくれたその薬は、違法ドラッグ。

 レース後の尿検査でそれが発覚して、俺はチームを追われるだけではなく、レースの世界からも追い出されてしまう羽目になった。

 ガールフレンドとも別れた俺は、パリでバイク便のアルバイトをしていた。

 子供の頃からバイクばかり乗っていて、他に何もできなかったから。

 ある日、図書館へ配達に行ったとき、そこで銀髪にオッドアイの美女と出会い一目惚れ。

 彼女は決まった日の決まった時間に図書館に来ることが分かったが、いつも来るだけで、出てこない。

 職員に聞いたところ、そのような職員は居ないと言う事だった。

 彼女を追っていて、もうひとつ発見したことがあった。

 それは彼女が図書館に来る日に、必ずその図書館から出てくるショートボブの眼鏡っ子。

“ひょっとして変装しているのか?”

 そう思って追跡していると刑事らしき女に逮捕され、事情を話すと何故か傭兵部隊への入隊を薦められ、あてのない俺はそれに従って入隊した。

 入隊して直ぐに、ここを推薦された訳が分かった。

 それはLéMATと言うエリート部隊との合同演習の時、そのLéMATの中でも最強と噂される第4分隊に彼女がいた。

 そう彼女の名はナトー。

 ナトー二等軍曹。

 俺はLéMATに入りたい一心で、一度落第した空挺の再試験を受けギリギリで卒業した。

 ただ空挺の試験に受かっただけではLéMATには配属されない。

 銃の成績や格闘技それに体力や知識が、ずば抜けていないと推薦されない。

 俺は体力には自信があったが、格闘技は中くらいの成績だったし、銃の方はここに入るまで触った事も無かったので成績は悪かった。

 もちろん何の知識もない。

 できるのはバイクの運転だけ。

 バイクによる偵察部隊もない、ここではその能力は無用の長物。

 それでも俺は給料を溜めて中古のKTMを買い、休日に演習場を走り回っていた。

 ある日それを見ていたLéMATのハンス中尉が俺の利き腕が左であることに目を着け、走りながら射撃の訓練をするように進められSIG MPV-Pを与えられ、その1年後に欠員の出たLéMATに偵察要員として配属されることになった。

 俺を拾ってくれたハンス隊長。

 そして部隊では女性扱いは御法度だけど、密かに想いを寄せるナトー分隊長のために俺は森を駆けた。

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