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【Is Paris burning?(パリは燃えているか)⑳】


 レイラの協力を取り付けてから数日後、エマのオフィスで作戦の概要が決まった。

 レイラの移送はDGSEの管轄から、DCRIの管轄に移行する名目で行なわれ、護送車はパリ警察の車両を改造して使用することになった。

「改造って?」

「まあ大まかなところで言うと、防弾装備ね。犠牲者は出したくないから」

「犠牲者を出したくないと言っても、まさか敵の目の前でレイラを放り出して逃げる訳にもいかないだろう?」

「その点は、我がDCRIにお任せあれってところねっ」

 自信ありげにリズが言った。

 護衛の車両は護送車の前後に1台ずつで、予め狙われている事が分かっているので身の安全を確保できにくいオートバイは使用されない。

「たったそれだけ?」

「一応、後ろからは囮の護送車が付いて来ることになっているのよ。こっちの方はオートバイ4台に護衛のパトカーも4台付くの。護送車も大型の頑丈なやつ」

「間違って、そっちに喰いつく可能性は?」

「ゼロよ。既にハッキング情報から、それらしいサイトの目星は付けてあるから、事前にそのサイトがハッキングしたことを確かめた後で実行に移すから。それに囮に喰いつこうものなら最初の計画からは外れてしまうけれど。それこそ一網打尽よ」

 自信満々で警備体制を語っていたリズの表情が変わる。

「どうした?」

「……っで、相談なんだけど、ナトちゃんレイラの護衛の車に乗ってくれないかな」

「部隊がOKしてくれれば乗るけれど、どうして?」

「う~ん――。相手がレイラをその場で射殺する可能性もあると思うの。その場合は、レイラが撃たれる前に、守ってあげないといけないでしょ」

「たしかに……でも、何故俺が? 警察やDCRIにも狙撃の上手いヤツなんて沢山居るだろ」「そりゃあ居るけれど、ナトちゃんには敵わないわ。貴女の拳銃での狙撃成績を見ていると、どうしても欲しくて」

「たしかにね」

 今まで黙って聞いていたエマが頷いた。

「ライフルでの狙撃も五輪金メダリストと互角、拳銃での成績も何度も600満点を出しているから五輪に出ればメダルは確実――それに格闘技も半端ないくらい強いし頭も良い。どういうふうに……いや、誰に育てられたら、こう言うふうになれるの?」

 エマとリズが俺の顔を覗き込んでくる。

「だから、俺は孤児だったから、そんなことは知らない」

 平和な家庭で育った人たちの前で、物心ついた時から銃を玩具として与えられ、銃で人を殺し喧嘩で金品を奪う生活をしていたなんてとても話せない。

 この仕事をしていてその経験が大いに活かされているのは確かな事だけど、時間を戻すことが出来たなら、ヤザとハイファと三人で平和に暮らしていた時代に戻りたい。

 ――いや、その前の、本当のママとパパに大切に育てられてみたかった。

 そして、狙撃も格闘技も出来なくていいから、普通の女の子として普通に学校に通って普通に恋愛もしてみたかった。

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