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【現在、ザリバン高原地帯06時00分】


「やっとこれで壕を占領で来た訳ですな。ところで、遠隔での爆破はないのですか?」

 いつのまにかモンタナが崖を降りて来ていた。

「最初に調べている」

「さすが軍曹」

「トーニのおかげ、そして全て除去できたのは、皆のおかげだ」

 丘の頂上に立って下を見る。

「入ってみるか?」

「喜んで!」

 モンタナが笑って応える。

 あらためて中に入ってみると、塹壕と言うよりはトーチカのような造りで、頭の高さには太い木の幹が覆われていて崖の上からの射撃に耐えられるようになっていた。

 トーチカの中からは驚くほど崖の様子がよく分かり、これが崖側からの侵入を阻止する目的で作られた陣地であることは明白だった。

 そして足元には空薬莢の他に煙草の吸殻やコーラの空き缶が散乱し、おそらく崖を降りようとしたアメリカ兵をここから狙い撃ち身動きを取れなくして、ヤザ達の部隊が到着するまで時間稼ぎのために、なぶりものにしていたのだろうと言う事は容易に想像できた。

「なぜ敵は、この場所に見張りを置かずに放棄したんだろう?」

 フランソワがボソリと言った。

「アメリカ軍を蹴散らしたから、もう用済みで何処かに行っちまったんじゃねえか?」

 モンタナが、その言葉に応えた。

 確かにモンタナの言う通り、用のなくなった陣地に人を残して置く必要はない。

 見張りが居ないと言う事は、既に用が無くなった事を示すはず。

 だが、引っかかる。

 アメリカ軍の降下地点が分かったとしても、それからこの陣地を造ったにしては堅牢すぎる。

 まるで予め、何かの目的のために造られていた気がしてならない。

 日本の戦国時代に、作戦のポイントになる場所に造られていた“出城”に似ている。

 その出城に兵を残しておかなかったのは、戦闘を圧倒的な勝利で終えた油断かも知れないし、あるいは無人偵察機による赤外線探査により発見されるのを恐れたのかも知れない。

 しかも、この出城のおかげで勇猛果敢なアメリカ軍を全滅せしめたのだから、そうとう効果の高い、まるで日本の歴史上もっとも有名な真田幸村が大阪夏の陣で建てた“真田丸”だ。

 もしも、これが真田丸だったとしたら、きっと敵にとって鍵になる場所に違いない。

 人を残さなかったのは、あるいはそれを悟られないため。

 つまり発見されたとしても、使用済みのトーチカに見せかけておく必要があったから。

 使用済みのトーチカにトラップは付きものだし、それが爆発したことで敵が来たことを知ることが出来る。

 これだけ複雑なトラップを仕掛けておけば、最初の爆発で兵を送り込めば簡単に奪還できるという自信もあったのかも知れない。

 しかし俺たちは敵に察知されることなく、この出城を確保した。

 これからこの有利点をどこまで伸ばすことが出来るかが、逆襲への鍵となる事だけは確かだろう。

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