【現在11時、ザリバン高原地帯】
「来た!」
負傷兵がザリバンの兵士を見つけた。
残念ながら奴らは救出部隊よりも早く到着してしまった。
人数は大凡50人、距離はまだ300mほどある。
恐らくこの50人は偵察を兼ねた囮。
本体は屹度森の中で様子を伺っているに違いない。
俺は、皆に指示するまで撃つなと伝え、コクピットに向かいレイに戦闘が始まるまでは無線を使わないようにと言うことと、戦闘が始まり次第基地に戦闘が始まったことと、半径5キロ以内に近づかないように伝えることを支持する。
足の遅いヘリコプターでは、簡単に地対空ミサイルの餌食になる。
救援に来たはずのヘリが落とされたのでは、兵士たちの士気に悪影響を及ぼす。
ジムが戦車の中から出すかどうか囁くように聞いてきたので「まだだ」と答えると、代わりにM4カービン銃を持ち上げ、駆けっこをする子供の真似をしてみせる。
加勢に行こうかと言うジェスチャーが面白くて、思わず口角が上がってしまう。
だが必要になる前に万が一怪我をされても困るので、残っているように指示すると彼はオープントップ車体からハッチを閉める真似をして、了解の合図を送ってきて俺とフジワラを笑わせた。
「本体は、どのくらいと予想する?」
「捨て駒が50だから、少なくても200……いや、300は、ひょっとしたら本命を引き当てたかも」
「本命か……」
なかなか、良いくじを引いたものだ。
「距離100で打ち始める。フジワラ、全員に初弾は単発でヘッドショットを決め、初弾が終わったら連射。あと重機関銃は次の合図まで撃たないように伝えてくれ」
「了解!」
何も聞き返さずに動いてくれる良い奴だ。
恐らく彼も分かってくれている。
先方のこの50人は薬漬けだということを。
薬漬けにされた奴らは、弾が当たっても倒れない。
薬で痛みを忘れてしまっているから、頭か心臓を遣らないと倒れないゾンビだ。
重機関銃でなぎ倒すほうが簡単かも知れないが、なるべくこちらの手の内は見せたくない。
特に強力な火器は、集中攻撃を浴びやすいから、少ない戦力では序盤からは見せたくない。




