表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/234

【現在05時、ザリバン高原地帯】

挿絵(By みてみん)

 現在時刻AM5時。

 負傷者の中には銃くらいは撃てる者もいたので、その者たちに機内から周囲の見える場所に警戒に当たらせフジワラ伍長とゴードン上等兵を呼び戻す。

 死んでいた将校のマップケースから見つけた地図を頼りに、三人で場所の特定を急ぐ。

 そして1号機の被弾から、この3号機が被弾するまでの時間に対して意見を聞く。

 誰も計ってはいないので、三人の感覚から平均を取り、敵の発射位置を想定する。

 被弾してから墜落するまでの時間を当てはめ、昨日23時時点の俺たちと敵の位置関係を予測した。

 結果は直線距離で約20キロから30キロの間。

 ゴードンの意見では、徒歩で約12時間は掛かるとの事だった。

 偵察から戻ってきたゴンザレスとキムの報告で、付近に車両が走れる道らしきものは無く、この高原以外は殆どが石と木で覆われた歩きにくい高台だということだったので、敵に前衛部隊がいない限り13時までは安全かも知れない。

 俺は直ぐにヤクトシェリダンを貨物室から出すことにした。

 戦車兵のジムに、先ず貨物室に残されていたシェリダンⅡの砲塔部分にワイヤーを掛けて前部ハッチの前まで引きずり出しそこに据えた。

 そしてヤクトシェリダンのほうはいったん機外に出し、敵から見えない位置に移動させて、攻撃が始まった場合に開いたハッチの前に遮蔽物となるように指示を与えた。

 こいつを動かすために、操縦士と砲手の二人が必要になり、人数的には大きな痛手になるが、戦力としてはそれ以上の物が見込めるから仕方がない。

 ジムに操縦と砲の操作のどちらをやるか相談したところ、ヤクトシェルダンは旋回砲塔を持たないが、走行は出来ないものの旋回は砲手側のレバーで車体を左右の方向に動かせる機能が供えられているということで助かった。

 そこで俺は、ジムの隣に片腕を負傷して機関銃を持てない兵士を見張り員として付けることにして、拳銃と双眼鏡を渡した。

 そして機体側面についている乗降用のハッチを壊して、それを盾として重機関銃を配置する。

 射手と弾薬係は足を負傷した者2名、それに手を負傷した見張り員の三名を一つのグループとして、弾薬はなるべく途中の給弾回数を減らすためにベルトを繋げて出来るだけ長く伸ばさせた。

 前部のハッチに移動したシェリダンⅡのコマンドハッチにも重機関銃を取り付けて、ここにも負傷兵を二人配置させる。

 あとの銃が打てる負傷者は、貨物用ハッチ下の僅かな隙間に寝かせ、各持ち場には予備の銃とありったけの弾倉と水筒を用意し、盾として使わなかったパラシュートと死亡した兵士達のコンバットアーマー(防弾チョッキ)を土嚢代わりとして置き、仕上げに泥を被せて分からないようにした。

 機体の周りには、なるべく悲惨な墜落現場を装うように(実際に悲惨な墜落現場ではあるが)機内に散乱していた不必要な物や兵士たちの亡骸を周囲にばらまいた。

 見晴らしの良い壊れたコクピットにはレイ伍長とキムの二人が軽機関銃を、そしてスナイパーのゴードンを呼び戻して配置し、体力のあるゴンザレスはサポート要員として武器や兵員の移動を任せた。

 レイ伍長が修理した無線はノイズが酷いものの、とりあえず基地に現在位置と生存者数を伝えることも出来たみたいだ。

 もっとも、向こうからの返信はノイズが激し過ぎて聞き取れない。

 しかしまあこちらからの発信に対して、なにか応答している気配は有ったので電波が届いている事だけは確かなようだ。

 万が一、声の解析は出来なくても、三角点法で発信源から場所の特定はできるだろう。

 通信が一応できた所で、各自持ち場で休憩を取らせることにした。

 こちらは負傷者を抱えているから、この場所を離れるわけにいかない。

 いわば籠城戦。

 追手の手を逃れて休憩する術はないから、今のうちに出来るだけ体を休ませておく必要がある。

 幸い、機の周囲は見晴らしが良く、その間の見張りは手と足の両方を負傷しているものに任す。

 重傷者はモルヒネで眠らせていて、この頃になると生存確率が無いと判断して見捨ててしまった兵士たちの呻く声も消え、静かな朝が訪れようとしていた。

 ひと段落終わったところでフジワラと高原の傍の森を歩いて、敵が隠れそうな場所を見て回る。

 歩きながら「トラップ(罠)仕掛けます?」と聞かれたので「NO」と答えた。

 たしかにトラップを仕掛けると、敵が来たことは分かる。

 しかし10個仕掛けたとしても、せいぜいヒットするのは1~3個程度なものだろう。

 それよりも敵に油断させて、少しでも多くの敵をなるべく森から高原に誘い込みたい。

 ただ、陣地として後々厄介になりそうなところにだけは、別の物を仕掛けておいた。

 それは迫撃砲弾。

 それを木に吊るしたり、地面に埋めたりして機に戻りフジワラにも休むように言って、俺も機体に寄りかかり、目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ