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【現在、ザリバン高原地帯17時40分】


 空が赤くなり、そろそろ辺りも暗くなりかけて来た。

 ジェリーとトムの救助は暗いほうが安全でやりやすいが、気になるのは次第に大きくなりつつある銃撃の音。

 おそらく救助隊と均衡を保っていたのが、徐々に崩れ出したのだろう。

 一旦崩れ出すと、踏ん張りがきかなくなり、雪崩のように早くなり止められない。

 そう、あの少尉たちのように。

 森の中から足音が近づいて来る。

 足音は、ふたつ……。

 だからといってジムとゴードンだとは限らない。


「軍曹!」

「あれ、軍曹が居ない……」

「ヘルメットは置いてあるぞ」

 呑気にジムが言っている。

 少し離れた所から、わざと足音をさせて近づく。

「ああ軍曹、そこに居たの」

 ゴードンが、ゆっくり振り向いた。

「お前たちは、二人とも死んだぞ」

「えっ!?なんで?」

「もし、俺が敵にやられていて、近づいて来たのが俺じゃなかったら?」

「縁起でもないこと言わないで下さいよ」

「これは映画や小説じゃない。死はそれぞれ平等にやってくる。敵の真っただ中でチェーンガンをぶっ放しても敵の弾は避けてはくれない。俺たちにできることは死の確立を減らすことだけだ。そのために、どんな時でも用心を怠ってはいけない」

 二人は少しシュンとなって「はい」と、子供のように頷いた。

「ところで、ルートは見つけたか?」

 ジムがゴードンを見て、そのゴードンが「見つけた」と自慢そうに言った。

「よし。じゃあ3人で行こう!」


 森の中を下り、やがて岩場が見えてくる。

 谷の斜面は、上よりも更に薄暗くなってきていた。

 やけに枯草が多い。

「ここから登って行けば、足場も比較的好いし、左右に大きな石があるから比較的安全だと思います」

 なるほど、大雨が降った時に水が流れる場所なのだろう。ここだけまるで水のない川のような道が出来上がっている。

「さて、行きますか!」

 ジムの言った言葉に対して、直ぐに返事が出来ないでいた。

 確かに三人で行けばいい。

 おそらくトムは歩けないだろうから、担いでやらないといけないし、もしも担げない場合は担架に乗せる必要がある。

 その場合担架を担ぐ2人の両腕が塞がる。

 そしてもしもジェリー伍長が歩けなかった場合は3人居ないと連れて帰ることが出来なくなることも考えられる。

 だから3人で行くのが一番良い。

 しかし……もし、帰り道にこの森の中に敵が居たとしたら。

 無防備な状態で帰って来る俺たちは、敵にとって格好の餌食。

 さっきまで丸見えの敵を森の中から狙撃していた事が、逆の立場になってしまう。

 3人で行って、帰りに誰かが斥候としてようすを探るという手も無くはないが、その斥候にしても敵に撃たれることで仲間に知らせる水先案内人にしかならない。

 最も確実なのは、森の中に一人残して周囲の警戒に当たること。

 戻って来る人間の安全を確保するためには、少ない人数の中でもこれは避けられない。

 敵が来たことを知らせ、どこに居るかを戻って来る人間に伝えられるだけで、安全なルートを探すことが出来る。

 敵を引き留める必要はなく、いち早く敵を察知して知らせることが、出て行った者たちの安全に繋がる。

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