表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/234

【現在、ザリバン高原地帯17時10分】


 森の中へ入ってからは、俺とジムの二人が前を警戒しながら歩き、ゴードンは援護のため少し離れて着いてこさせた。

 少しの物音も逃がさないように誰も話さず、そして少しの物音もさせないように用心深くゆっくりと進む。

 聞こえるのは、まだ遠い銃声と、鳥の囀り。

 捕虜にした敵の居た窪地に到着した。

 ゴードンのリュックの一つを下ろさせて、そこに埋めた。

「持っていくんじゃなかったんですか?」

「デポ(補給所)だ」

 森の中に、それぞれのリュックを三か所に分けて置いた。

 森を進むと、急に森の木々が無くなる手前で止まった。

 少尉たちの部隊が進んだ崖が見える。

 森の中から双眼鏡で探る。

 500m先の谷を7人のザリバン兵が降りて行くのが見えた。

 その上の道には5人。

 崖にも数人居る。

 この位置から道を進むと、敵からは丸見えだ。

 ゴードンとジム、順番に双眼鏡を渡し敵の位置を説明するとともに、見逃している敵が居ないか確認させた。

 どうやら、見える範囲には他に敵はいないようだ。

 ゴードンとジムのリュックをここで下ろして身軽にさせた。

 ゴードンに尾根に登って、安全なルートがないか偵察に行かせることにした。

 ジムも援護要因として着いて行かせる。

 ただし、ジムはあくまでも護衛。

 山岳歩兵のゴードンように慣れてはいないから離れて着いて行くことと、少しでも難しいと判断した時は絶対に進まないように指示した。

 その時の合図はウグイスの鳴き声。

 この辺りには、いない鳥だから聞き間違うこともないだろうし、かといって聞こえたところで珍しい鳥の鳴き声だと思う程度。

 もっとも、戦場で鳥の鳴き声なんて誰も気にしちゃいない。

 二人には、もしも偵察中に谷の方から発砲音が聞こえても、かまわず偵察を続けるように指示した。

 もしもジェリーたちが見つかったとしても、7人くらいならM82で対応は出来る。

 二人を送り出したあと、直ぐにM82の準備をした。

 まだ発砲音がしないということは、ジェリー伍長たちはまだ見つかってはいないということ。

 どこかの茂みに身を隠しているのだろう。

 スコープを覗いて注意深く探る。

 ……見つけた。

 ジェリーは、意図的にここから見えやすい位置に身を隠していた。

 危険を承知で、仲間が助けに来ると信じて。

 トムはその奥に居るようだが、木の枝で覆っているのだろう、ここからは確認できない。

 ただジェリーの首が何度も茂みの奥に向くので、そこに居ることだけは確かなようだ。

 しかし、もう敵は発見できる位置まで近づいてきている。

 おそらくジェリーはもう確認しているはずだ。

 確認していながら敵を撃たないのは、見逃してしまうという僅かな可能性に賭けているのだろう。

 と、言うことはトムの方は戦える状態ではないということか……。

 ジェリーの直ぐ横を敵が通り過ぎる。

 気が付かない。

 その後ろからも、もう一人。

 もしも後ろの奴を振り向けば、今度は必ず気が付くはず。

 そして都合の悪いことに、身を潜めているジェリーが前の男を撃つためには姿勢を180度変えなければならず、そうすると当然隠れている茂みから音は立つ。

 挟まれた状態だから、前の敵を撃てば後ろの敵に撃たれるし、逆に後ろの敵を撃とうとすれば前の敵に撃たれる。

 そろそろ、こちらも限界だ。

 ターゲットを前の奴に絞り、スコープを調整する。

 撃ち損じた場合の猶予は殆どないけれど、M82なら500mで打ち損じることは先ず無い。

“ズドンッ!”

 一発目を発射。

 まるで戦車砲のような音。

 思惑通り、前の敵が倒れたので、直ぐに後ろの男を撃つ。

 スコープに映し出された、その顔には何故前の男が血しぶきをあげて倒れたのか分かっていない様子だった。

 距離は500mだから彼も一人目と同じように、銃声を聞くことなく死んで行くだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ