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【2年前、リビア“Šahrzād作戦”㊴】


 エマに手伝って貰い、いつもよりチャンとなるようにお化粧をした。

 どうも、私には絵の才能がないのか、お化粧は苦手。

 それからハンスが買って来てくれた白いワンピースのドレスに、白いハイヒール、それに首には青色のスカーフを巻いて準備完了。

「あと一階に帽子があるから。私、先に降りているから、少しは恋人らしく出来るように練習してから降りて来てね!」

 そう言ってエマはバタバタと、階段を下りて行った。

「恋人らしくっていっても、困るよな」

 おどけた顔でハンスを振り返った。

「仕方ないだろ、任務なんだから」

「じゃっ、とりあえず手でも繋ぐか」

 俺の差し出した手をハンスが掴む。

 瞬く間に身を引寄せられて、俺はハンスの胸の中に収められた。

「手を繋ぐだけでは、恋人同士には見えんだろう」

 ハンスを見上げていた俺の顔に、ハンスの顔が覆い被さり、唇にもう一つの熱い唇が重なる。

 いつも紳士的なハンスの行動に戸惑い、その胸を強く押し、合わさった唇を離す。

「珍しいな、任務の準備を躊躇うなんて……」

“そう。これは任務だ”

 ハンスの言葉に勇気が出て来た俺は、ハンスの胸に押し当てていた手を除けて、それを首に巻き付けて唇を押し当てた。

 ハンスも俺の腰に腕をまわし強く抱きしめ、俺たちは堰を切ったようにお互いの唇を求めあった。

 しばらく恋人同士の練習をして、下に降りた。

 前を降りりてゆくハンスが、ハイヒールの俺を気遣って手を握ってエスコートしてくれる。

 ムサが、それを見て「おぉ!」と感動してくれて、エマと二人で拍手して出迎えてくれ、こそばゆい。

「まるで新婚の夫婦みたいじゃ! これなら、誰にも疑われたりはしまい」

「だって、本物の恋人同士ですもの」

 エマが軽口をたたいたので、そこは「任務だからだ!」と全力で否定したが、隣のハンスは何故か涼しい顔。

「あらあら、練習が過ぎるわよ」

 そう言ってエマが口紅を塗り直してくれ、その時だけハンスが軽く咳払いをして、はにかんだ。

 塗り終わった口紅を、俺のハンドバックに仕舞う。

「それでは頼んだわよ。最終集合地点は、ニルス少尉たちの居るあのホテルだからね」

 そう言ってエマが俺の頭に真っ白な大きい帽子を被せてくれた。

 白いスーツに、色鮮やかな花束を持つハンス。

 その横で、同じ白いワンピースのドレスを着た俺。

 まるで新婚旅行をしているような二人。

 街を歩く人たちが、ことごとく俺たちを見て振り返る。

 しかし、見た目の華やかさとは裏腹に、俺たちの任務は“敵前上陸”いや、それよりも“特攻”に近いかも知れない。

 この真っ白な服が真っ赤に染まることを覚悟して、ハンスと二人仲睦まじくバラクの居るアジトに向かって真っすぐに進む。

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