【2年前、リビア“Šahrzād作戦”㊳】
「作戦はいたって簡単。ある夜、道に迷って悪魔の城に迷い込んだお姫様は、そこに住む魔王と出会う。死を覚悟したお姫様であったが、なんと魔王はお姫様を監禁するどころか逆に悩みを打ち明ける。魔王の立場を捨てて自由になりたいと。魔王は自分の悩みを打ち明けると、お姫様に地図を書いて帰り道を教えてくれた」
「なんか、芝居じみていない?」
「いいの、いいの。ここからが本題だから」
そう言ってエマは話を続ける。
「魔王が書いてくれた地図のおかげで、無事お城に戻ることが出来たお姫様は、それを王子様に話す。丁度、王子たちは魔王の城に攻撃を掛ける準備をしている所だったので、お姫様の地図を逆に辿れば面倒な悪魔どもに邪魔されずに、魔王のいる玉座の間まで辿り着けると喜んだ」
〽 エマが歌い始める。
『待って!魔王は私のことを助けてくれたのよ』
『しかし、魔王は魔王。悪魔の首領だ!』
『でも、反省しているの。魔王はもう悪いことを止めて自由を求めているの、お願いだから魔王を許してあげて』
『許すなんて出来るわけがない。魔王のせいで沢山の人々が傷ついた』
『どうしても?』
『ああ、どうしても!』
『魔王は、生まれ変わろうとしているのに?』
『過去の過ちを許すわけにはいかない』
『私が、こんなに頼んでも?』
『姫、許しておくれ。魔王は君に優しかったけれど、僕にはそれが本当のことなのか信じられない。君は騙さているのかも知れない』
『そんな!酷いわ』
泣き崩れるお姫様の肩に、地図を握りしめた王子の手が置かれる。
『分かっておくれ……』
その時、雲の切れ間から一陣の光が差し込みアフロディーテの声が届く。
『二人で調べておいで』
『『二人で!』』
『『調べる?』』
『そう、本気で魔王を救うのなら、本気で魔王を倒すのなら、先ず二人の目で確かめるのがいちばんよ』
『『でも、私たち(俺たち)二人だけで、どうやって?』』
『あなたたちには、これを持たせてあげましょう』
アフロディーテがそう言うと、手にブレスレットが付いた。
『『これは?!』』
『これは、あなたたちがどこに居ても、私たち神々にその場所を知らせる魔法のブレスレッドよ。あなたたちが危なくなったとき屹度役に立つことでしょう』
エマの、一人ミュージカルが終わった。
「なんで自分だけアフロディーテなの?それになんでミュージカルなの?」
「それは、ナトちゃんがあんまり可愛いからなのよぉ~♪」
そう言いながら手渡されたのは、GPS機能付きの腕時計。
それと、立派な花束。
「時計は分かるけれど、この花束はなに?」
「これはハンスが持つの。道に迷った恋人に地図を書いてくれたお礼よ」
「えっ!じゃあ、いまの三文芝居って?」
「失礼ね。ミュージカルよ、ミュージカル! そうこの作戦よ」
“もーエマったら、どこから本気で、どこからが冗談なのかさっぱり分かんない”




