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【現在、ザリバン高原地帯17時00分】


 ジェリー伍長と通信兵のトム一等兵を助けに行くために、用意を始めた。

 先ずは折りたたみ式の担架、それに銃弾……。

「リュック二つに可能な限り多くの銃弾を詰めろ。あとレーション三箱に水筒は二つ。暗視装置も忘れるな」

「リュック2つも?」

 驚いてゴードンが聞き返した。

「ああ、前後ろに担ぐ」

「でも、そんなに銃弾を持ったら、重くて動きにくくなりますよ」

「分かっている。だが戦場で銃弾が切れたら命の糸も切れてしまう」

「……分かりました」

 ゴードンが納得していないのに返事を返したのは、良く分かった。

 なにせ銃弾を2個のリュックに詰め込んだことで、弾帯などを含めた装備品の重量は、ゆうに100㎏を超えている。

 言ってみれば、ふた昔前の空挺部隊が重い落下傘を担いだまま戦場を歩き回るようなもの。

 万が一、森の中で白兵戦にでもなれば、イチコロだ。

 あと、この輸送機を捨てることになった際に、敵に利用されないように自爆装置を拵えたので少尉にそれを伝えた。

 本当なら軍曹に伝えたかったけれど、負傷しているので仕方がない。

 少尉ともう一人の兵に、ヤクトシェリダンに仕掛けた装置の起動と時間のセット方法を教えた。

 起爆装置にはトランシーバーを使っているので、もしもセットする余裕のない場合は、対になるトランシーバーでの爆破も出来るようにしてあることと、その方法も教えておいた。

「凄いですね軍曹。こんなこと知りませんでした。どこで習ったんですか?」

 まさか反政府テロ組織に居たときに覚えたなんて答えられるはずもないので「戦場に長く身を置くと自然に覚える機会に出くわすだろう」と答えておいた。

 質問をしてきた兵は俺の話をよく聞いたが、相変わらず少尉の方は聞く気は全くないような感じだった。

 まあ気に入らないのは仕方がないが、兵たちが可哀そうに思えた。

 もともと彼らの目的は、1号機の墜落現場に行くことが第一目的ではなかったはず。

 俺たちの救出が迅速に行われるようにするためと、それが終わった後は、おそらく付近の哨戒活動。

 そして、他の部隊到着の後に協力して1号機の墜落現場に行くというのが、最初与えられた計画であったろう。

 それを、この少尉は抜け駆け的に、哨戒活動中に何らかの理由。おそらく敵部隊と出くわして、交戦中に逃げる敵を追っていて1号機の墜落現場まで辿り着くシナリオを考えていたのだろう。

 運よく敵に出くわすことは出来たが、蹴散らすはずが、逆に蹴散らされてしまったわけだ。

 しかし、腑に落ちないことが有る。

 それは、どうして通信兵のトムが、仲間に取り残されるほど前に出ていたのかということ。

 ベトナム戦争の教訓で、通信兵は真っ先に狙われることは分かっている。

 だから分隊の真ん中からやや後方の、比較的安全な位置に居るのが普通。

 この配置を守っていたのなら、先に森を出た兵たちが敵を発見するはずだし、発見していなくても敵の方が焦って先に撃ってくるはず。

 反動の強いAK47で銃撃戦を行う場合、彼らにとって距離はハンデとなる。

 遠距離での打ち合いでは、M16系やHK416を持つ方が射撃精度は高く有利になる。

 だから彼らは身を隠せる限り、相手との距離を詰めておきたいはずなのだ。

「……」

 出発する間際に、もう一つの銃に手を伸ばした。

 手にしたのはバレットM82。

 それに12.7mmを1マガジン10発と弾丸を更に10発持つ。

 それを見たジムが「俺が持ちます」と手を差し伸べてくれた。

 M82は銃単体で13㎏もあるから、さすがに女性に持たせるのはマズイと思ったのだろう。

 だけど、ここは戦場。

 俺だって動けなくなるほど、欲張りはしないので断った。

 M82を背負い、手にはHK416を持ち、指を二本立てて二人に合図する。

「さあ、出発だ!」

 俺たちは20メートル間隔で、後部ハッチから出て森の中へ入って行った。

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