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【2年前、リビア“Šahrzād作戦”㊱】


 エマが目を覚ました雰囲気に気が付いて俺も目を開けると。濃いブラウンの瞳が俺の瞳を捕らえていた。

 愛情に満ちた瞳を向けられて、心臓がトクンと鳴る。

「ナトちゃんって、やっぱり優しいのね」

 人から優しいなんて言われた覚えはない。

 あるのは、サオリとミランからだけだ。

 妙に気まずくなって「疲れてベッドを間違えて寝てしまっただけだ」と嘯くと、急に体を燃やすように熱くしたエマにキスの集中攻撃を受けてしまい、仕方なしに何回かに一回だけそれに応じる。

 エマのキスはそれで増々激しくなり、ついには俺の体の上に乗って来た。

 俺の開けてしまったバスローブの上に、エマの一糸まとわない体。

 柔らかくてボリュームのある胸が、布を介すことなく俺の胸に乗ってくる。

 広げられた俺の両手に指を絡め、ベッドに押さえつけてくる。

 エマの目が爛々と輝き、俺はその視線から逃げるように首を横に向け目を逸らした。

「これだ!」

 エマは気が付いたように小さく叫ぶ。

「どうした?」

「これよ」

 そう言ってエマが俺の首に、強いキスをしてきた。

「やめろ!形が残る」

 敵ならば重心からズレたほうの手を体に引き寄せて、体を入れ替えるところだけれど、味方にはそれが出来ない。

 言葉で制止するだけ。

「だから、やめ……」

 制止する俺の口が、エマの唇に塞がれた。

「もう少しだけ」

 一瞬唇を離したとき、エマがそう耳元で囁いた。


 ベッドから抜け出したあとのエマは精力的だった。

 直ぐにムサとセバに相談したかと思うと、電話を始めた。

 電話は3か所にかけて、最初は警察、そして次の相手は誰だか分からなくて、最後はなんだかボーイフレンドに掛けているみたいな雰囲気で、こっちに遊びに来るように話していた。

 電話を終えて30分くらいすると、警察のパトカーが3台店の前で止まった。

 さっきエマが呼んだものだろう。

 作戦への協力依頼。

 そう思っていると、急に下でセバの騒ぐ声がした。

 何だろうと思って1階に降りると、セバが警察に連行されるところだった。

「どういうこと!?」

 少し強い口調で言い、エマを睨む。

「テロを企てた容疑で通報したわ」

「酷いな。裏切ったのか?」

「そうね、だってザリバンなんだもの、当然でしょ。セバと彼の友達には、警察で充分反省してもらわなくては」

「なるほど、そういうことか」

 セバたちには俺たちの作戦中、安全な所に隔離したということか。

 作戦の経過でザリバンと打ち合いになって追われることになった場合、セバは俺たちを撃たなければいけない側にいる。

 もしも、撃たないで故意に逃がすようなことにでもなれば、それこそ裏切り者として後々ザリバンから目を付けられるはず。

 だから、そうならないように、先ず戦場から排除したのだ。

 警察は、セバを車に乗せた後も直ぐには発進しないで、辺りに不審人物が居ないか調べ回っていた。

 道路の斜め向かいにあるアパートの窓が閉められたかと思うと、そこから数人の男が駆け出して行き警官が追った。

 俺たちを監視していた奴らだ。

 追って言った警官はしばらくすると手ぶらで戻って来て、それから3台のパトカーは走り去った。

「次は、何が来る?」

「ボーイフレンドが来るわ」

「まったく……」

 少し呆れて、店の戸締りをして2階に上がった。

 とりあえず暇なときには寝ておこうと思い、そのままベッドに横になり目を瞑って寝た。

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