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【2年前、リビア“Šahrzād作戦”33.2(報道されない事実)】


「では何故、カダフィーがインチキ野郎に成り下がって、リビアが混乱したか話してやろう」


・カダフィー就任前のリビアは、世界で最も貧しい国の一つだった。

・石油の利権は一部の特権階級の人間が支配していた。

・カダフィーは、その利権を独り占めした代わりに、石油のもたらす金を国民に使った。

 ・教育費の無償化政策で、わずか10%前後だった識字率を90%まで引き上げた。

 ・医療費の無償化政策で、誰もが高度な医療サービスを受けられるようになり平均寿命が延びた。そしてリビア国内で対応のできない難病に関してもリビア政府が手配して、海外での治療が受けられるようになった。

・税金の廃止。

・不当な利益、地価の高騰に繋がりやすい不動産業の禁止。

・電気代の無償化。

・ローンの金利0%を法律で決めた。

・新婚夫婦にはマイホーム購入資金として、政府から5万ドルが支給された。

 (これは就任時に誓った『全てのリビア人に家を与える』と言う政策に基づくもの※貧しい家庭に生まれたカダフィーには子供時代家が無かった)

・国民が車を購入する際に、その半額を政府が支払った。

・農業を志望するものには、政府から土地・家・器具・家畜・種子が無料で支給された。

・女性の人権も尊重され、教育や車の運転も問題がなく、イスラム圏でありながら全身を黒い布で覆うアバヤの強制もなくなった。


「つまり、石油の利権を全てカダフィー自身が管理することで、その利益が全ての国民に行き渡るようになった。カダフィー自身も贅沢はしていない。宮殿と呼ばれるその家も、空爆や襲撃に備えた施設と来賓を招くための部屋はあるが、一見普通の裕福な民家程度で宮殿と呼ばれるほどではない」

「でも、反政府勢力が武装蜂起したと言うことは、それでも悪政だったんだろ」

 セバが口を挟んだ。

「そこが問題じゃ。反政府勢力は(以下箇条書き)」

・どこで武器を買った?

・そして、その金は誰が出した?

・何故首都から遠く離れたベンガジで蜂起して、トリポリまで戦い続けてこられた?

・なぜNATOは直ぐにその反政府勢力に呼応するように空爆を始めた?

・反政府勢力が首都トリポリに入場した時に、民衆の歓迎を受けなかったのは何故か?

・反政府勢力が政権を掌握したのちに、何故完全国有化だった中央銀行を廃止して外国の資本銀行を入れた?


 新疆ウイグル自治区はイスラム教徒の国なのに、何故宗教テロ組織は誰も助けようとしない?

 それは、得る物が無いからだ。

 核を保有した北朝鮮は経済制裁で済んでいるのに、生物化学兵器を持っていなかったイランのフセインは何故倒された?

 それはイランに石油が有るからだ。

 俺はカダフィーを美化するつもりはない。

 ただ、世界中の人に知らされていない事実を知ってもらいたいだけだ。

 あとは、その事実を知った者が考えれば良い事だ。


 答えは明白だ。

 これは外国によるリビアの利権狙いに他ならない。

 嫌、その外国さえも巨大な資本家に操られているのかも知れない。

 1000キロも離れたベンガジから、トリポリまで戦いながら進むのは高度な補給システムと多大な資金が必要となるはず。

 決して“アラブの春”などと言う綺麗ごとではないだろう。

 そこで独裁者であるカダフィーに、インチキ野郎になってもらう必要があった。

 俺は黙って聞いているエマの顔を見た。

 目が合ったエマはコクリと頷く。

 急にエマが作戦に消極的になったように感じたのは、屹度ムサからこの話を聞かされていたからだろう。

 エマは迷ったはず。

 この国を壊してしまったのは自分たちの国ではないかと。

 俺たちは軍人。

 軍人としての任務は決して忘れてはいけないが、その前に最も大切なのは、一人の人間であることだ。

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