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【現在、ザリバン高原地帯14時35分】


 もう少しでジムの居るところに着くという頃になって、ジムが銃を撃ち始めた。

 急いで走り、岩場の陰に潜り込むと、そこには1人の先客がいた。

 ただし、既に死んでいる。

 ジムが援護射撃をしていなかった時間、彼はこの男と戦っていたのだ。

「ジム、怪我は?」

「ああ、何とか大丈夫だ」

 ジムにケガがなくてホッとした。

 ゴンザレスが歩けない状態で、ジムまで歩けなかったら、もう二人を連れて帰ることは出来ない。

 敵が、さっきまで俺が居た正面の岩場に取り付く。

 約10人。

 更に、そこから左右に展開するものも、それぞれ5人ほど。

 輸送機からの重機関銃の音も聞こえるということは、この地域の敵に動きがあったということ。

 おそらく少ない獲物を漁りに来たのだろう。

 3対20。

 これはナカナカ帰れそうにもない。

「ゴンザレス、撃てるか?」

「ああ、大丈夫だ」

 ゴンザレスに俺のHK416を渡して、俺は死んだ敵のAK47を取って応戦した。

 重点目標は左右に展開しようとする敵。

 これを許してしまうと、もうここから脱出することは叶わない。

 そして敵を撃ちながらも、たまに後方を確認する必要もある。

 万が一、敵の部隊が返って来た場合、早く察知しなくては全滅してしまうから。

 長期戦は避けられそうにもないので、二人に出来るだけフルオートにしないように指示した。

 俺たちの応戦で敵の動きも止めることが出来た。

 だが、それだけ。

 状況が好転したわけではない。

 持久戦に持ち込めただけで、不利な状況は変わらない。


 レイやゴードンなら4発のRPG発射音を聞き分けて、すでに救援ヘリの要請をしているはず。

 だが、同時に派手な打ち合いの銃声も、ヘリの攻撃に出た敵にも届いている。

 部隊そのもの、もしくは幾人か人数を割いて、こちらに戻すことは充分感がられるし、ヘリが当初の着陸地点に降りてこないことを察したヤザが引き返してくるかもしれない。

 袋小路になる前に撤収するため。

 ヤザは、そういう危機管理能力には長けている。

「最後のマガジン装填する!」

 ジムが言った。

 ジムは俺たちの援護射撃をするため派手に撃ちまくっていたので、弾の消耗が激しかったのだ。

「ゴンザレス。あと何マガジンだ」

「未使用1!」

 俺のベルトには3マガジン残っていたので、ジムに2、ゴンザレスに1マガジン渡す。

 死んだ敵は予備マガジンを使い果たしていたから、俺の残り弾数も少ない。

 三人とも拳銃を持っているが、この距離だと拳銃はナカナカ当たらないから価値は低い。

 もっと切羽詰まった状況用に残しておかなければ――。

「最後のマガジン装填!」

 ゴンザレスが言ったあと、直ぐにジムも同じ報告をした。

 それに俺も。

 残る弾数は、それぞれ30発を切ってしまった。

 あれから敵を10名以上倒したが、同じ数くらい補充され依然正面にはまだ20名の敵。

「ゴンザレスと俺は狙撃!ジムは後方警戒!」

 弾が切れたのが分かると、敵は容赦なく左右に展開して更に不利になるので、狙撃の腕の確かな二人で応戦することにして、ジムには岩の裏側に回らせることにした。

 そしてジムが裏をそのまま森伝いに、来た道を戻って輸送機に帰るように命令した。

 ジムは嫌だと言ったので「命令!」だと言い聞かした。

「心配すんなって、拳銃の弾も含めれば俺と軍曹とでまだ60発はある。それに軍曹の自動小銃の残り弾だけで敵が全滅する可能性だってあるだろ、だから遣られはしねえよ」

 ゴンザレスが明るくそう言ってくれると、ジムは泣き出してしまった。

「馬鹿だなぁ、俺たちは死ぬためにお前を返すんじゃない。ゴンザレスはこの通り歩けない。それに敵がいるこの岩場を担いでは帰れないだろう?だからサッサと戻って戦車で迎えに来い!」

 そう言ってジムの肩をポンと叩いた。

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