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【現在、ザリバン高原地帯14時30分】


 RPGを捕獲したあと、この正面の岩をグルリと一周してみた。

 見通しは抜群。

 確かに、この位置にRPGを配備したというのは、地形的に間違いない。

 正面には岩があり、その下には人が数人潜れるくらいの隙間もあるから、航空機からの攻撃にもビクともしない。

 前面には幾重にも味方を配置しているから、正面からの攻撃にも強いし、側面も数は少ないけれどよく守られている。

 おそらく俺たちが出てこないのを前提に、側面背面を守っていた人数を割いて、救援ヘリへの攻撃に向かわせたのだろう。

 それがなかったら、近づくことはできなかった。

 一応RPGが他にないか探してみたが、この2門以外はなかった。

 それよりも派手に戦ってしまったので、前面の守りについていた敵がこちらに向かって来ているから、早く撤収しないとヤバイことになる。

 とりあえず戻るにしても、ゴンザレスを置いて行くことはできない。

 撃たれた場所から動いていないことを考えれば、一人で動くことが出来ないのだろう。

 担いで戻るには、まだ左右の敵が残っているのが気になる。

 両方とも人数は少なくなっているが、弾に当たってしまえばこちらの負け。

 ゴードンを担いで岩場を歩いて戻るので、俺はその間応戦が出来ない。

 運のいいことに、俺はRPGを2門持っているから、これを左右の敵にブチ込んだ。

 LéMATで様々な武器の射撃訓練を徹底的に訓練したおかげで、正確に敵兵の居場所を捉え、左右からの銃声は沈黙した。

「大丈夫か!どこをやられた?」

「すまない、足をやられて歩けない。ここで援護するから俺に構わず行ってくれ」

 ゴンザレスが話している間に、服を脱いでTシャツを破いて止血した。

「大丈夫!骨と動脈はやられていない。元気を出せ」

「しかし生身で100キロある――」

 ゴンザレスの言葉が止まるのも無理はない。

 今の俺は、上半身スポーツブラ一枚だから。

 俺の胸を見ていたゴンザレスに明るく言った。

「俺を頭上の敵から助けてくれたご褒美くらいにはなったか?」

「いっ、いや、俺はそんな」

「もっと良い事が出来るように、国へ帰るぞ。ただし相手をするのは俺じゃないけど、かまわないか?」

 そういって拳を突き出すと「あぁ。俺が相手じゃアンタに悪い。故郷に居るガールフレンドで充分さ」と、そう言って拳を合わせてくれた。

 上着を適当に羽織り、その上からボディーアーマーを付け、ゴードンの腰から弾倉ベルトを外して自分の腰に巻き付ける。

 ゴンザレスの自動小銃は放棄した。

 少し痛むが、我慢しろ。

 そう言って、ゴンザレスを担ぐ。

 確かに重い。

 こんな重いものを担いで悪路を進むのは、入隊試験の延長で行ったマルタ島での空挺訓練依頼だ。

「すまねえな。重いだろ」

「まったくアメリカ人は、どうしてこうも筋肉オタクが多いんだ?」

 LéMATのモンタナを思い出していた。

 そう言えば奴は確か120キロあるって言ってた。

 もし負傷したのがゴンザレスじゃなくてモンタナだったら、俺は置いて行った。

 あと20キロも重い荷物をこの岩場で運ぶなんて、こりごりだ。

 頭の中で、置いてけぼりにされて情けない顔を見せるモンタナの顔が浮かんで、微笑ましかった。

 目の前に、周囲を慌ただしく警戒するジムの姿。

 もう直ぐ、中間地点に着く。

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