【現在、22時40分、ザリバン山岳地帯上空】
【あらすじ、お話し→お話】 俺の名前はナトー。
オッドアイに銀髪、そして色の抜けた白い肌。
中東の反政府テロ組織にいた昔、俺の教育係だったヤザが不気味だと嫌っていた。
悪魔の子だと、仲間に紹介されたこともあった。
そして今は、死神と言われている傭兵だ。
子供の頃、中東の紛争地域に生まれ、物心ついた時には反政府テロ組織の一員としてAK47カービン銃を握っていた。
両親は知らない。
見たこともなく、声さえも聴いたことがない。
だけど生まれた場所だけは、俺の教育係だったヤザに教えてもらって知っている。
紛争の空爆で破壊された、瓦礫の下だと。
【現在、22時40分、ザリバン山岳地帯上空】
これまで傭兵として各地の戦場を回ってきた。
そして、この日は巨大テロ組織であるザリバン掃討作戦の一環として、最新鋭のC237輸送機の中。
空の急襲揚陸艦と言われる、とても堅牢な機体だ。
巨大な貨物室には100名の完全武装の兵士と、2両の戦車が搭載されている。
目の前には騎兵戦車シェリダンⅡと、自走歩兵砲ヤクトシェリダンが太い鋼鉄製のワイヤーで固定され、その冷たく無機質で不気味な姿があり、30名の傭兵、それに70名の多国籍軍兵士たちと共に飛んでいる。
任務は、ザリバンの山岳地帯に最前線基地を構築し、奴らの中枢となる司令部を潰すこと。
先ずは、そのための第一波として6台の車両と、300名の兵員を送りこむ。
囮作戦という噂もあるが、機内には俺たち傭兵1個小隊に対して、多国籍軍の中でも最も勇猛なアメリカ軍の海兵隊が2個小隊入っているので、囮ではなくこれは本格的な掃討作戦の先鋒を担っていると思った。
どちらにしても、俺はただ敵だと言われる目標物に弾を打ち込むのだけだ。
風景を楽しむための窓もない軍用輸送機では、のんびり外の景色を見る事も無い。
天井に僅かに開けられた明り取り用の窓からは、夜空も見えない。
無機質な有機EL灯と、月明かりだけが差し込む、薄暗く静かな機内。
飛行機の静かなエンジン音の他に、編隊を組む二機の僚機の音が微かに聞こえる。
※(1)騎兵戦車シェリダンⅡ:通常の戦車と同じく回転砲塔を持つが、超軽量のアルミ合金で出来た車体は大型のヘリでも空輸が可能なほか、パラシュートを使って降下させることも出来る。
※(2)自走歩兵砲ヤクトシェリダン:シェリダンⅡの車体から回転砲塔などの上部構造物を外し、代わりにオープントップの戦闘室を備えた自走式の野戦砲。
本日2019年02月02日は、22時に第二話、23時に第三話自動投稿致しますので、引き続きお楽しみいただければ幸いです。
また、この他にも「さよならロン。また会う日まで」と言う毛色のまったく異なる小説も執筆中ですので、併せてご覧いただければ嬉しいです。
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