名前と襲撃
よろしくお願いします
「名前ねぇ、名前名前、んー、何か無いか?簡単なのがいいかな?」
思い付きで名前を決めようとは言った物の特にそれっぽい名前も見つからないな。
俺は何も考えず川に視線を落とし魚を観察しながら考える、
あっ跳ねた、何だこの魚、見た事無いな、等と思い本来の悩みから脱線している事を思い出し考え直す。
やっぱり今の姿から何か取るか?考えても思い付く様な物でも無いし、
俺の姿は赤い箱で蓋の部分が口になっており舌を垂らした状態だ、うんミミックだな。
でもよく見ると可愛い気がしなくもない?
蓋の隙間から出てる舌とか...、奥にあるクリクリお目目とか、
近くで魚が跳ねる。
あっ。
「フラム...。」
川に映る自分の赤い箱が波紋で炎の様に見えたので思い付いた。
《個体名を「フラム」に決定しました。》
はやっ!!幾らでも早過ぎない?
他に思い付きそうな名前も無いし...、いいか。
何処かの言葉でフラムは炎だったよな、間違ってたら一生物の恥だけど...、まぁ俺と同じ世界から来た奴なんて居ないだろ。
《マスターとは違い正規に転生した転生者は存在します。》
まじかよ、大丈夫だよな?いや大丈夫だろ、多分。
ってあれ?力が抜ける...、意識が遠くなる...。
《一定量の魔素を使いネームドモンスターとして昇格するため低活動モードに切り替わります。》
そんなナビさんの言葉を最後に俺の意識は途切れた。
数時間後
《マスター、昇格が完了しました。》
無機質な声と共に俺は夢から覚めた。
あれ、確か俺、自分の名前決めてから...、どうなったんだけっけ?
そっからの記憶が無いな。
《マスターは自分自身に名付けを行い魔力の大半を使用しました、それにより活動の為の魔力が足りず一部機能をシャットダウンしたので低活動モードに以降、今のマスターはネームドモンスターとなっております。》
おぉ、ナビさん!わざわざ説明ありがとう、持つべきは信頼出来るナビさんだな!
でもネームドモンスターって自分で成れる様な物なのだろうか、ゲームやラノベでは圧倒的上位者から名前を貰いネームドモンスターに、とかするイメージなんだけど。
《はい、通常は進化を重ね魔力総量が増えると名付けが可能になります、
ですがマスターは異世界に転移する間際に世界の知識をインストールしております、
その時、時空に漂う力をこの世界の理に従い魔力へ変換しマスターに送り込みました、それによりマスターの魔力総量は通常のミミックの数倍から数十倍になっております、
ちなみに自分以外に名付けを行う場合は魂を消費致しますのでご注意ください。》
なるほど、簡単に名付けは出来ないって意味か。
てか時空の力を魔力に変えたって...つまり...、ネコババしたって事?
《問題ありません。》
いや、ナビさんが問題無いと思うなら俺は全然良いけどね、俺にはよく分からない次元の話だし、そう言う事はナビさんにお任せするよ...。
それより、俺が眠ってる間にナビさんの言ってた魔物は襲ってこなかったの?
魔物は居なくとも野生の獣とかなら居そうだけど...。
《マスターを喰らう魔物や獣の種族は存在していません、ですので敵対しない限り襲われる心配は無いでしょう。》
あ、そう言えばそうだったね、って事は――
《飛んでください!!》
突然ナビさんが叫び指示を出した、それに驚きながら飛び跳ねる。
シュンッ
一瞬前にいた場所に何かが刺さった。
「何だこれ...、矢?!」
あぶねぇ!数秒遅かったら確実に当たってた、ナビさんありがとう!と感謝の念を抱きつつ飛んできた方向を見る。
「なんだ?偶然か?」
そこに居たの生前の俺と同じ種族、人間だった、襲われねぇんじゃなかったのかよ!
取り敢えず話し合って解決するか...。
「ちょっと待ってくれ!色々あってこんな姿になってるが元は人間だ!」
《人族に今のマスターの言語は通じません。おそらくマスターの体内にある宝を狙っているのでしょう。》
マジかよ!じゃあどうすんの?俺元の世界じゃ一般人だから戦いなんて出来ねぇぞ!!!逃げるか?!
《存じております、ですが戦ってください、現在のマスターならば勝てます。》
「なぁ、あのミミックカタカタ震えてねぇか?」
弓を持ったマッスルの男が言う、見た所2人だな...。
「魔物だ、考えても仕方無いだろ、でも何故ミミックがこんな場所に?」
「それこそ考えても仕方ねぇよ、どっかに盗賊の宝でもあったんじゃねぇのか?」
控えめに言って勝てる気がしない...。
ここに来る段階で逃げ足に期待出来ない事は把握している。
そうこうしている内に男2人は剣を構え始めた、俺の人生、いやミミック生はそうそうと終わったかもしれない。
《諦めないでください、ネームドモンスターになった事よりステータスとスキル噛み付くの効果が変わっています。》
いやいや、噛み付くがちょっと強くなった所でそんなに変わるものでもあるまいし...。
でも最後の足掻きだ!どうにでもなりやがれ!
「ミミックとは言え魔物だ、油断するな!2人で決めるぞ!」
「おうよ!」
そして俺はスキル噛み付くを発動した、
ガブッ
突然、魔力が口から飛び出し、形を作り2人の男を食った。
長く感じる数秒、最後に残ったのはその男達の物であったであろう足と段々と理解する度に沸き起こる元同族を殺した事による罪悪感だった。
《擬態・人間を獲得しました。》
無機質な声が頭に響いた。
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