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1-2.変態はまだまだ知らない事だらけでした

細分化前タイトル

『ついに始まった冒険』

初掲載 2018/07/22

細分化前の投稿文字数 20673文字

細分化2018/09/24


 俺、日岐古守ひき こもりは小悪魔に転生した。

 前世ではそれはそれは品行方正で。

 道を歩く女子たちが二度見して思わずときめいてしまうようなイケメンから……。


 学生時代なんて、もうラブレターの波に飲まれたり。

 毎日告白の嵐で青春時代を謳歌していた俺が……。


 ……なあんて掲示板にあげていた様な。

 下らない嘘を付いている場合じゃ無くて。


 本当はラブレターも告白された事も一度として経験した事の無い童貞である引き籠りの陰気オタクから、こんな丸っこいマスコット風の小悪魔へと転生したかというと。


 一言で言うと、死んだから。


 我ながら唖然とした死因は隕石の直撃。

 ずる賢く親からせしめた金を手に持ち。

 新作のゲームを購入したその帰り道に命中。


 そのまま意識なくお陀仏となった。


 確率で表記するなら宝くじの一等の当選確率をも。

 余裕で上回る天文学的な確率で死んじゃったのだ。


 まあ……と言う訳で死んでしまった訳なんだが。

 現在、大切なのはその後から今に至るまでだ。


「おお! 俺、なんか成長した感じがするぜ!」


 ひとまず……死んだ直後の地獄編については置いておこう。

 大切な部分だから思い出さないといけない気もするが。


「ほらほら見てくれ。何とか飛べる様になったぞ!」


 俺はとても忙しいからな。

 背中から生えているこの飾りみたいなちっこい羽で体を動かすのに忙しない。


「凄いわね! 今のモンスターを倒したからかしら?」


 とりあえず掻い摘んで言うならば。

 俺は悪魔の姿でこの異世界へと送られた。


 車を筆頭に空を駆ける飛行機。

 ヘリなどの文明の宝と呼べる乗り物。

 コンクリートやセメント、石炭で固められた道路やビル。

 他にも信号機、電柱などなど現代的な物体などが一切見当たらない。

 ファンタジー世界らしい中世みたいな世界へ。


 放出される排気ガスの臭いも。

 夜中に脳を騒がせる車の稼働音も無い。

 クリーンで清潔感溢れる世界へと、まるでタイムスリップでもしたかのように近代的な文明が見当たらないいにしえの時代へ転生して来たんだった。


「へっへっへ……でも翼がもげそうだ。もうちょっと慣れないと」

「でも、浮けたら色々と便利よ。貴方なら出来るわ!」


 そして、初めての浮遊体験を楽しんでいる現在で。

 こんな何気ない会話をする中でもう一つ。

 語るのを忘れてはならない事がある。


 それは今、俺へ励ましの言葉をくれて行動を共にしているこの少女についてだ。


 名前をアナスタシアといい。

 輝く金髪と俺好みの良い大きさの胸。

 巨乳好きの俺的にかなりポイントの高い少女。

 様相もゲームの世界に迷い込んだような漫画みたいな現実離れした見栄えをした女性だった。


(……やっぱり、いつ見ても良いもんだ)


 ……二次元という画面や本の中にだけ存在する。

 個性的な容姿の女性に発情していた俺にとっては。

 まずそれが何よりも感動出来る事だった。


(全く……異世界に転生って最高だぜ!)


 と……。

 彼女の紹介だけで……肝心の冒険の内容についてを伝え忘れていた気がしなくもないが……。

 とりあえず、纏めると俺は彼女に対してムラムラしている事さえ分かれば大体あってる。


「ねぇねぇ、私は成長しているかしら。何だか強くなった感じがするんだけど」

「え? ああ、ちょっと待ってくれ……ええっと、どこにやったかな」


 そうしてそんな可愛い女の子と旅をしている時点で。

 ウハウハな気分だった俺は、彼女にそう言葉を向けられ。


「あったあった……これで確認するからな、動くなよ」

「ええ、分かったわ!」


 転生前に世話になった地獄より贈られた。

 その『モノクル』を目元にかざして。

 俺は彼女の姿を通して見る。


 すると……。


【対象の解析ヲ開始致シマス】


 そんなアナウンス越しに、


【アナスタシア……魔力6上昇 賢さ9上昇】


 レンズにはそう文字が浮かび上がった。

 一応何故読めるかは不明だが象形文字みたいな文字で表示された。


 ……転生する際に青い狸が持っている翻訳のコンニャクでも食わされたのだろうか。


「えーっとな……そうだな……魔力と賢さの数値が上がってるな」

「やっぱり……何だか強くなった気がしてたの」


 と、とりあえず俺はそのモノクル越しに浮かんだ。

 上昇した数値の値を読み取り、彼女へそう伝えた。

 ……そう伝えてみたんだが。


(予想以上に役立たねぇな、コレ)


 俺はため息を交えながら、成長を喜ぶ愛らしい相棒の様子をレンズ越しに見る。

 地獄からの贈り物であるモノクル型のアイテム。

 その名も『ステータスチェッカー』という片目だけに着けて操作するレンズを、


【使い方はとっても簡単! かざしてみるだけ!】


 そうご丁寧な説明書も抱き合わせで送られた。

 死後で世話になった閻魔大王からのプレゼントで。

 転生一日目を終えた夜に遅れて俺の手元へとやってきた特殊なアイテムだった。


 性能は名の通り、キャラクターのステータスを確認できる。

 ゲームでいうところの確認画面の様に対象者の強さを見る事が出来るという。

 それなりに便利そうな代物……の筈だったんだけど。


(他には特に……ああ、生命力が4上昇してたか……)


 だが俺はモノクルに映る彼女と。

 浮かび上がる数字を見つつ、落胆する。


 根拠は口にした通り。

 表示される情報が少なすぎたんだ。


 例えばだけど……俺のイメージを。

 強さの表記をするならこうだ。


『悪魔コモリ レベル3

 生命力44 魔力22

 力10 守32 早19』


 と、こんな感じで。

 現在のゲームはHPヒットポイントMPマジックポイントなどの横文字表示を。

 これは少し古臭いイメージかもしれないが、少なくともこれ位は想像していた。

 ……にも関わらず、見れた情報は成長した上昇値のみ。


 別に……彼女のスリーサイズを見たいとか。

 服が透けてくる機能が欲しいという訳では無い。

 まあ見れるなら、勿論金を払って、もしくは臓器を売ってでも課金をしてでも知りたいが……。


 せめて全体的なステータスくらいは見たい。

 だって不便じゃん? 味方の強みが分からないって……。


「あっ、でも……そういえば、確か……」


 ふと、そう煮え切れない気持ち抱く間で。


 俺は……ある言葉を思い出す。


 転生する直前に閻魔様が向けてくれた言葉の一部。

 どうでもいいと聞き流しかけていたが、その覚えていた内容を、


【特別に君へ一つだけ役立つアイテムをあげよう。上手く使うといい。但し君の成長に応じてグレードアップするからね】

 

 そんな俺は別れ際の言葉を思い出す。


「……もっと俺が強くなれば、見える部分も増えてくるのかな?」


 だから俺は一旦そう結論を下し、アナスタシアから貰った小さなポーチにしまって、


「それじゃあ、換金用のコアも回収したし、旅を再開しましょう」

「ああ、そうしようぜ」


 倒したモンスター達が落としたコアという結晶を回収後。

 戦う前まで開いていた地図を改めて見直す。


「そういえば今、俺達ってどこへ向かってるんだ」

「ここよ、この印を付けている町に向かってるわ」

「……ここか?」

「ええ、そこであっているわ」


 異世界へ転生したとはいったものの。

 当たり前だけど、まだまだ何も知らない俺。

 見える物の殆どが初見となり、完全に未開の地。


「……やべぇ……全然分かんねぇ」


 故にこうして地図を持っていても無駄。

 世界に広がる町の名前や特色も一切が不明なのだから。

 そもそも俺の生活していた世界に『地球』名があったようにこの世界にも何らかの名はあるだろうが、それも知らない程、


「大丈夫大丈夫! 私が案内をするから」

「……ありがとうございます」


 そんな己の無知を実感しつつ。

 分かる情報を得ながら彼女と行動を共にする中。


「ここは『プルミエル』の町って言って、結構人が集まっているみたいで情報集めにはいいかなって。この前立ち寄った村で情報を集めるのならもっと賑わっている町が良いって教えてもらったし」

「分かった。じゃあ案内頼みます」

「任せて!」


 スマートフォンや勿論パソコンなんか無い。

 いや、むしろ俺がいた世界における文明の利器なんかは全く無いからこそ。


 今、信頼できるのは地形を読み解き指針代わりとなってくれるアナスタシアだけだ。

 だから彼女の傍を離れないようにして、その目的地の町を目指すんだった。


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