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3-10.変態は早速事件に出くわしました


「……という訳だ。私が得た気になる情報は」


 のっけから相手の正体が明らかになりつつある中。

 それはエリスから話された情報だった。


「中でもそのブライトという男性については父との交流が深くてな。武器を揃える際にはいつも利用して、依頼を出しに行く時には私も同行していたから、この国一番の顔馴染みでもあったんだ」

「でも……その人が消えちまったのか?」

「ああ、元々評判が高い人物で顔も利いていたから、職人界隈でかなり噂になっていたみたいだ」


 彼女曰く、それは【神隠し事件】と言った。

 今日訪ねた知り合いの職人が皆、消えていたと。

 付近の職人の話によると、ある日忽然と姿を消してしまい、以降家の中もずっともぬけの殻。


「それも一件や二件の話では無く。数件、いや数十件に至ると彼は言っていた。但し、全員がこの町の古株だという点だけは一致していたんだ」


 加えて今、彼女が告げた通り。

 偶然の一致なのか、何か意味があるのか。

 その神隠しの被害者は全てこの町の住民であり。

 少なくともボスと思しき、トイ・ジェネラル率いる魔造兵団が【この国を襲撃して来た時には住んでいた】とされる者達ばかりだったと聞かされた。


「うーん……流石に国中を巻き込んでの騒動となると、一筋縄ではいかなさそうな異変だな」


 と……非常にきな臭く。

 これまた、異変の肝になりそうな重要な話題をこうして教えて貰ったは良かったんだけど……。

 正直、今俺が発した通り異変の規模の桁が違った。


 これまでの冒険で例えるなら……。

 汚染された湖にいた魔物の浄化に成功。

 すると水不足だった町に水が流れて、解決。

 後は平和になって町民も戻ってきて万々歳とか。


 満たされぬ空腹に苦しめられていた人物に望む物を食わせたら、万事解決とか言う異変みたいな事件。


 と、そう言った単純な話では無く。

 如何にも根が深そうな話だった。


「まあ……この神隠し事件がそのトイ・ジェネラルとどう関係しているか分からないからな。ひとまず今は保留にしてくれ。でないと、いつまで経っても話が進まないだろう?」


 すると彼女は悩み込む俺の表情を見たのか。

 そんな気遣いの言葉を向けてくれた。


「そう……だな。エリスの言う通りだ」


 そうだ、今はあくまで情報交換の時間なんだ。

 色々な異変に疑ってかかるのは決して間違いじゃないけど、今は目的を絞る事が最善だ。

 だからこそ色々勘ぐるのは結構だが、答えが無い以上あまり考え込んでも意味は無いんだ。


「よし、じゃあとりあえず。後はアナスタシアの話を聞いて、今日の情報交換は締めくくろう」

「ああ、それがいい。今は情報を頭の片隅にだけでも残すのが大切だからな。では、アナスタシア。最後になったが、君の情報を教えてくれ」


 よって話し終えた俺とエリスはついに最後の番。

 トリのアナスタシアに情報の開示を求めた。

 すると……。


「ええっと……その……あの……」

「んっ? アナスタシアの番だぞ?」

「そ……そうよね……分かっているわ」


 何処か様子がおかしかった。


「どうしたんだアナスタシア、トイレでも我慢しているのか? 何も言わないから早く行ってきた方が良いぞ。私達女性にとって我慢は毒だぞ」

「ち……違うわ! そのね……あの……」


 理由こそ全く不明だが、俺達と目を合わせない様に彼女は少し俯きつつ、加えて落ち着きを無くしたように足をパタパタと振っているのだ……って……ま……まさか。


「なあ……エリス。いきなりで悪いけど一つだけ、この国について尋ねたい事があるんだけどさ」

「うん? どうしたコモリ。改まって」


 その瞬間、俺の頭にはほんの僅かな疑念。

 コンマ数ミリ位の極々小さな予感がよぎる。

 まさか……いやいや、まさかそんな。

 こんな事はあり得ないだろうと思ったんだが。


「アナスタシアの担当した【中央エリア】って。王宮以外に何かお店とかってあったりする?」


 答え合わせがてら、一応そんな確認をしてみる。

 すると、尋ねたエリスの口から出たのは。


「そうだな……高級品を扱う服の専門店だったり。貴族御用達のレストランとかだったかな」

「他には? 他には何か変わった店は無かった?」

「……後はそうだな。私はそこまで興味は無いんだが、質の良い【宝石店】が並んで――」


「ギクッ!?」


 …………………………。

 ………………………………。

 ………………………………。


「あ……アナスタシア。まさか君は……」

「ち……違うのよ。これには深い事情があって」

「ほぉ、是非聞かせて欲しいね。世界を救う宿命を背負った勇者様が、何故ゆえに宝石店というワードに反応するかの理由をな……」


 俺はボロを出した彼女に詰め要る。

 少し言葉で突いただけで、笑える位に不審な位に目を泳がせるアナスタシアさんに対して。


「す……少しだけ魔が差しただけなの! だってあんな綺麗な宝石とかを見たら誰だって……」

「「アナスタシアァァァ?」」

「あ、あはははは……二人共、顔が怖いわよ?」


「エリス。流石に【俺がやっちまう】と、エチケットやモラル的に色々マズいから。任せていいか」

「任せてくれ。私が責任を持ってくすぐりの刑と、お説教の二重処罰を与えてやるぞ」


 ……と、俺と恐らくエリスも内心呆れつつも、説教モードでジリジリと距離を詰めていく中。


「ま、待って! 情報はちゃんとあるわ! 本当よ! 私が歩き回っていた中で違和感を感じた事で……どうも、この国には【子供の姿】が――」


 ……するとそんな時だった。

 そう彼女が苦し紛れも良い所の、本当に得たのか怪しい情報を慌てて口にしようとした……。

 その刹那の出来事だったんだ……。


「きゃあああああああぁぁ!!!!!」

「「「!?」」」


 それは窓の外から聞こえた。

 光物大好きの勇者様の情報提供の途中、もといサボった事について弁明中の彼女だったけど。

 そんな言葉を掻き消すように響いた声に。


「コモリ! 外からだ。確認してくれ!」

「ああ! 分かった!」


 俺達の意識は一瞬でそちらに移した。

 明らかに、何やら只事では無いと判断出来る。

 その女性の甲高い叫び声に対して、俺はその大元を確認すべく、すぐに部屋の窓を開けて二階から声が響いた街路の様子を確認したんだ。

 すると……。


【そこの女! 止マレ! 止まらねバ、貴様に向けて攻撃行動を開始スル! 早く止マレ!】

「機械の兵士……いや魔造兵っていうのか。とにかく女性が兵士達に追われているみたいだ!」


 ……まだ早計なのは承知の上だったけど。

 俺が見たのは、恐らくこの先で敵となる存在。

 その機械の兵士に追われる女性の姿だった。


「エリス、武器は!?」

「今、持った! 行けるぞ!」

「アナスタシアは!」

「大丈夫! 行けるわ!」


 だからこそ、俺達は即座に行動に移った。

 明らかに温和な雰囲気では無く、ただひたすら逃亡する女性を一刻も早く救出すべく。


「よし! じゃあすぐ行くぞ!」

「「分かった!」」


 急いで、部屋を飛び出していき。

 宿の外へ向かったのだった!



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