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3-7.変態は入国審査を受けました

ランキングタグとやらを追加してみました。


 俺達はオーガ属という亜人種の生まれであり。

 力自慢の、戦士的なポジションである赤髪の少女エリスを仲間にし。

 行動を共にしてからそれなりの日数が経過し。


「へぇ……アンタ達、サイドの町から来たのかい。ご苦労な事だなあ……随分遠かっただろう」

「まあな。ていうかオッサン、俺見ても何も思わないのか。悪魔だ、とかモンスターだ、とか……」

「ハッハッハ、別に思いやしねぇよ。この地方じゃあ、そこのオーガ族のべっぴんさんみたいに。他種族が生活しているのも珍しくないんだ」


 彼女との出会いのきっかけにもなった。

 サイドの町を離れて以降これといって。

 特に大きな町や、他の国もを見かけずに。


「そうなんですか?」

「ああ、そうさ。特にこの国はそれが顕著でな。人間は勿論だが、鍛冶関係はドワーフ属のやってる店があったり、編み物は手先の器用なエルフ属だったりと。まあ……大国程ではないにしろ、かなり他種族間でも賑わっている場所だぜ」

「…………エルフ属か……いいな」


 ただ情報と地図に従って。

 整備されている道を休憩しつつ進み。

 稀に通りすがる馬車に相乗りさせてもらったり。

 『バッドモンキー』や『マウンテンコング』などの。

 道中では、獣型のモンスターと戦ったりして。


「…………私と同じオーガ属はいるのか」

「むっ? オーガ属か……結構前に来た時はいたと思うが……そう言えば最近はあまり見ないな。何だい、同属でも探しているのかい?」

「いや、そうではないんだ。気にしないでくれ」


 山道の景色や道に慣れつつも。

 そろそろ疲れが見え始めてきた今日で。

 ようやく俺達は目的地である。

 山々が並ぶモンターニャ地方の国である。

 ここ『ガンテルツォ』に到着した。


「でも……本当にまるで別の世界に来たみたい」

「そうだろ、そうだろ。初めて来る奴は皆そんな顔をするんだ。何せ『鉄の要塞国』なんて言われる程だからな。石造りとは違って珍しいだろ」

「ええ。私のいた田舎とは大違いだわ」

「要塞ねぇ……」


 なお金属などの加工技術などの。

 様々な工業が発展しているのか……。


(近未来に来た気分だな……)


 俺が見ているその国の外側を高い鉄製の壁で覆っており。

 今、オッサンの言った通り鉄の要塞国と。

 そう呼ばれても、頷ける位にこれまた頑丈な鉄壁に包まれた国を外から見つつ。


「荷物はさっき調べて貰った通りだ」

【ハイ、確かに確認致しマシタ。鉄鉱石。銅鉱石、鋼石などなど。採掘された鉱石の品々が確認されたノデ、どうぞお通りくダサイ。よい一週間を】

「ああ、あんがとよ。さて、よいしょっと……」


「おっ……次はオラの番か。待ちわびたぜ」

「えっと……確か入国審査があるんだっけ」

「そうだ。まあ普通にやっていれば怪しまれる事も無いさ。ほんじゃ、また縁があれば会おうぜ!」

 

 現在、そのガンテルツォの門前にて。

 荷物を抱えた気の良いオッサンと話したりして。

 入国の審査を受ける為の列に並び。

 その最前列辺りで待機していた。


「にしても……凄い行列だな」

「うむ。このガンテルツォは金属加工に特化している職人も多いからな。大方それが目的だろう。質の良い武器を仕入れ、他国で売るのかもしれん」

「へぇ、詳しいな。エリス」

「後は……そうだな……宝石の加工とかでも評判が高いから、女性へのプレゼントとかでも人気が高いな。なんだったら、知り合いの職人を――」


「…………………………」

「すまん、アナスタシア……そんな眼差しで俺を見ないでくれ……そんなキラキラした眼差しを向けられても、俺から宝石は出てこないぞ」


 と、こんな感じで……。

 退屈な待ち時間の間で、俺達と違って物知りなエリスからの情報と。

 乙女らしく、宝石というワードに胸を高鳴らせつつも、手に入らない現実にしょぼくれる相棒。

 我らが勇者のアナスタシアに挟まれて。

 そんな他愛無い会話に花を咲かしている内に。


「どうだ、これで審査は終わりかい?」

【ハイ、無事終了致しマシタ。ようこそ、ガンテルツォへ。そのまま国内へお進みください】

「おう、あんがとよ。お疲れさん」


 ……あっという間に。

 さっき審査を受けていた。

 気の良いオッサンの入国審査が終わり。


【次にお待ちのオ客様、此方へ】

「私達の番みたいね」

「思っていたより、審査が早いみたいだな」


 番が回ってきた俺達は係員に呼ばれる。

 ……その無機質な鋼鉄の胴体をした。

 人型のロボットと言えば良いのか。

 それも現代でもまだ存在しない様な。


【ハイ、三名様でありマスね】


 何とも珍しい言葉を流暢に話して。

 こちらと見事に意思疎通する。

 現代人も驚くべき性能を持った……。


【内訳ハ……そちらのヒトと、オーガ属の女性二名と……何処か……スケベそうな悪魔一匹】


「なっ!? 誰がスケベだ!」

「どうやら機械にまで見抜かれているみたいね」

「大丈夫だ、コモリ……気にするな! 私は、男はスケベであるべきだと思うぞ! それを証拠に私の父など【万年発情期】だったしな!」


「エリスさん!? お願い、恥ずかしいから大声で言わないで!? 後それ、レディの発言じゃないし、どさくさに紛れて家系の恥まで晒さないで!? 何、父親に恨みでもあったの!?」


 ……と、身内がとんでもない暴露を挟み。

 背後に待機する何人が吹きだすような。

 まさかの機械が妙なアドリブを挟み。


【これはコレは……失礼致しマシタ】

(………………この機械兵め……)


 そう言った周囲の人間の笑いを取る道化の如く。

 金属製の冷たさを感じさせない。

 何処かコミカルな面も見せて、思わず。

 この機械の兵士…………賢い……と。

 ……開発者の顔も見て見たいぜ……と。


 そんな生き物ではないのに、人間の様みたいな。

 妙に得体の知れない技術の片鱗を感じつつも。


【さあ、お進みください。女性はあちらの赤い扉。男の……オスの糞悪魔は、青い扉デス】

「なんでわざわざ言い換えたんだよ!?」


 そうワザと癇に障る様な。

 煽り性能の高い機械兵に馬鹿にされながら。


【デハ、あちらの青の扉デス】

「へぇへぇ……分かりましたよ」


 俺達は指示された通りに門の内側にある。

 まさに男子更衣室と女子更衣室みたいな。

 赤と青の二色の配色をした。

 性別ごとに分けられた扉へと……。



【では、次のお待ちノ方】

「ンネェン……機械さん、ア・タ・シはどっち? ほら、ボディは男! ハートは乙女よぉん!」


【分かりまシタ。デハ、今から『心臓ハートを引きずり出し』て、検査いたシマスので……】


「えっ!?」

【ギギ……そのまま立っていて……クダサイね。周囲の人々に迷惑がカカリますので――】


「あ、すみません……。アッシ……女扱・・いで構いません。調子こいてスイマセン」

【……了解しまシタ。ではの扉へ】


「?……あのぉ、今、女扱いでって……僭越ながら……申し上げさせていただいたんですが」

【青の扉へ】


 ……………………。

 …………………………。


 おっと……いけねぇ、いけねぇ。

 今はそんな馬鹿やらかした。

 オネェ系の客を見ている場合じゃねぇや。

 と、とにかく……性別ごとに分けられた。


【お入りくだサイ】

「あ、ああ……オッケー」


 所持品を確認する為の検査部屋に入っていき。

 目に見える護身用の武器以外に怪しい物を所持していないかなどの、妥協の余地が一切無い。

 ミスなど無さそうな冷静な機械兵によって。


【荷物はこのポーチだけデスね】

「ああ、そうだぜ。しっかり調べてくれ」

【確カに……デハお調べ致しマス】


 今回の目的地であるこのガンテルツォにて。

 俺は大人しく入国の審査を受けるのだった。


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