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3-5.変態は改めて【強さ】について確認しました


 さて……と。

 これまた色々とあったが。

 先日であった新たな仲間もパーティに加えて。

 さらにその人物のおかげで、頭を悩ませていた。

 深刻な金欠問題も、無事に解消された事により。


「一旦、この辺で休憩を入れましょう」

「ゼェゼェ……賛成だぜ……ちょっと疲れた」

「ふむ、確かにさっきまで、モンスターとの戦いばかりだったからな。少し休むとしよう」


 何とか冒険を再開し。

 現在、俺達、計三名は次なる目的地。

 怪しげな魔物が現れたという王国。

 山間の国『ガンテルツォ』を目指して。


「よし。それじゃあ、ここで魔除けの魔法をと。……神よ、邪悪なる魂を持つ者より、我らの身を、貴方様の庇護の元にお置きください! 聖域の魔法『タリス』! …………ふう、これで大丈夫」

「おお、なんとも便利な魔法だな。私も欲しいぞ」

「前までそんなの使えなかったのに、やっぱりアナスタシアも成長してきてるんだな」


 不便だがスマホも、グー〇ルマップも。

 GPSとか位置情報を探る手立ては無いので。

 時間こそかかりはしてはいたんだが。

 手持ちの地図と方位磁石を使い。

 後は道端ですれ違う人々との会話の他。


「ふふふ……そうよ。私だって勇者の末裔として立派に強くなってるの。貴方コモリと違ってね!」


「むむむ……くそう……言い返せねぇ。でも俺だって強くなっている筈なんだけどな。まだ全然使えないんだよな。どうやったら使えるんだ?」


「うーん……そうね……勘かしら?」

「お前に聞いた俺が馬鹿だった……」


 新規加入メンバーである赤髪のポニテ頭で。

 物知りなオーガ属の少女エリスの情報と。

 手元にある情報をフルに活用して、順調に。


「まあまあ、焦っても良い事は無い。人には得意不得意があるんだ。もしかしたらコモリも後少しで魔法が使えるかもしれない。気長に待つんだ」


 そのガンテルツォへと。

 こうして歩んでいたのだった。

 今まで殆どが平地だった冒険から。

 現在は高い山がそびえるモンターニャ地方へ。

 気候もモンスターもガラリと変わった領域で。

 上り坂続く、高低差のある道中を経ていき。


「……まあ、とにかく。今は休みましょう。もうあのモンスター……なんて名前だっけ、エリス?」

「『マウントドッグ』だ。こういう山道で狩りをする犬型のモンスターでな。群れで行動するし素早い、慣れるまでは多分苦労するぞ」

「どうりで強いわけだ……」


 今は戦闘での疲れを取るようにして休んでいる。

 脇道にある青々しい針葉樹みたいな。

 馬鹿でかい木の元にて。


「何か食べる?」

「いや、俺はいいよ……ああ、でも水は欲しいな」

「私は、さっき買った骨付き肉を食べるぞ!」

「ホント……エリスは良く食べるわね……」

「さっきも何か食べてたよな……凄いな……」

「ああ! 食う事は生きる事だからな!」


 そうした他愛無い会話を交えながら。

 腹ごしらえも兼ねた休憩を入れる。


「さてと……じゃあ俺はこの間に……えーっと。アレは何処にしまって……おいたかな?」


 そして、その間に俺は。


「ううん! やっぱり肉は最高だ……このジューシーさ。如何にも食って生きているという……ムグムグ……実感がある……ムグムグ」


 と……隣で。

 旨そうに肉を頬張る笑顔に満ちた。

 幸せを噛みしめるエリスを置いて。


「あったあった、これだ」


 俺は自分の荷物袋を漁り。

 ごちゃごちゃと集めた物の中から。

 一つの『あるアイテム』を出した。


「……それ見るの久しぶりね」

「ああ、最近は大きな戦いも無かったし。全然使ってなかったからな。エリスも仲間に加わった事だし。一回、自己満足で、お前達をて見ようかなって思ったんだ。別にいいだろ?」


「ええ、構わないわ。でも変な情報が出たら……」

「大丈夫だから……スリーサイズとか、体重とかそういう乙女にとってデリケートなやつ出ないから……そんな怖い目で見ないでおくれ……」


「ムグ? 何だかよく分からないが。私も別にいいぞ。体重でもスリーサイズでも好きなだけ見ろ」

「あっ……そうっすか。ありがとうございます」


 と、エリスに関しては。

 色々女性という立場的に。

 もう少し恥じらいをと、ツッコみたかったが。

 とにかく俺は仲間の二人に断りを入れて。


 こうして魔除けにも守られる。

 落ち着いて、使える安全な空間にて。


「さて……じゃあ久し振りに使ってみるか。最早、終盤の薬草位に荷物の肥やしになってたけど……」



 本当に……今更感漂うのだが。



 異世界ここに転生してきてから。

 今日でそれなりの日数が経過して。

 すっかりこの丸くてキュートで見る者を癒す。


 名も知らない種族の子供悪魔の体に変わり。

 今ではすっかり自分の手足として。

 自在に使いこなすまでに慣れて冒険する。


 ゲームで例えるなら。

 とっくにチュートリアルを終えて。

 もう序盤も終わりという展開なのだが。

 

(自分の中でも分かりやすい様に確認だ)


 今一度自分の中で『強さ』についてを。


 こうして仲間の少女達がくつろぎ。

 ゆっくりと観察できる間に。


「何だか変わった眼鏡だが……魔道具なのか?」

「いえ、違うわ。あれはね……ゴニョゴニョ」

「ほぉ……そんな珍しい道具があるのか」


 この『ステータスチェッカー』という。

 見た目は、完全に片眼鏡モノクルの。

 元々はステータスの上昇値しか映さなかった。

 使いどころに非常に困っていたアイテムだった。


 しかし、俺の強さによって開示される情報が。

 その項目が増えていくという特徴があり。

 戦闘を経験し、俺のレベルが上がっているのか。

 今では見られる情報が増えてきている。

 割と役立つアイテム君になりつつあった。


 そんな……今頃になって。

 設定を忘れたのではないかと疑われる程に。

 出番の少なかった前世の地獄からの。

 閻魔様からの贈り物を使い。


「じゃあ、俺は勝手に見てるから」

「分かったわ」

「ムググ! ムグググ!」

「エリスさん、口に物入れて喋らないで……」


 俺はモノクルを軽く掃った後に。

 二人をそのレンズにそれぞれ捉えて。

 仲間の詳細を見る事にしたのだった。


 さて……。

 では、これまでの戦闘で見てきて。

 そのキャラクター自身だけの固有というか。

 個々で持っている『強さ』についてだが。


 これは大きく分けて、二種類あった。


 それは【アビリティ】と【スキル】であり。

 この二項目が現時点での俺が把握できる。

 ステータス以外の強さの概念として。

 大まかな格付けに使っていた。



 じゃあまずは【アビリティ】についてだ。



 これは所謂『特性』であったり。

 『血筋』とかに該当するらしく。

 例えばまず勇者の血を引いている末裔の。

 相棒である金髪少女のアナスタシアであれば。


【勇者アナスタシア……勇者の末裔。

◆アビリティ『勇者の血筋』

・聖なる属性の技の威力を引き上げる。

・悪魔系に対する攻撃能力が上がる。

・?????????????

◆まだまだ秘められた力がある様だ……】


 と、観察眼鏡ステータスチェッカーをかざして見ると、そんな能力アビリティ内容が。 

 まるでナレーションの様に浮かび。

 俺にこうして直接教えてくれる。


 

 よって……まあ、結果的に言えば。

 アビリティは先程のさっきの説明的に。

 まだあくまで憶測ではあるのだが……。


 恐らく……生まれ持った。

 元より持つ固有の性質。

 天賦の才みたいな感じだった。


 だからこそ先日仲間になった。

 オーガ属のエリスを通して見ると。


【対象の解析ヲ開始致シマス】


 そんなアナウンスと共に。

 次の様な内容がモノクルに浮かんだ。


【エリス……オーガ属生まれの少女。

 ◆アビリティ『鬼血オーガブラッド

 ・力の上昇に大きな補正が入る。

 ・丈夫な肉体により治癒能力が高い。

 ・??????????????

 ◆まだまだ秘められた力がある様だ……】


 と、一部は先と同じ様な内容で浮かんだ。

 一応ここで補足なんだけど……。


 このモノクルがどういう原理で。

 どういった観点から、各々のデータを解析し。

 表示しているのかに関してなんだけどさ。

 

 流石にこればかりは……分からずで。

 発信元が【閻魔様のプレゼント】と。

 下手すれば次元を越える様な。

 凄まじい経緯を経てきたアイテムだった為。

 何故、解析不明な点があるのかという点に関しては、その一切が謎めいていたんだけど……。


 この現時点では少なくとも。

 それなりに知りたい詳細などについてを。

 こうして俺に教えてくれるのだった。



 さて……じゃあ最後となる二つ目。

 こっちは散々聞いた事がある言葉で。


 その【スキル】という。

 要するに【技】に該当する。

 魔法という幅の大きなものから。

 オリジナルの剣技や体技といった。

 細かい特技などの総称であり。


 勇者の聖なる力を宿すアナスタシアであれば。

 その光の力を生かした浄化魔法や、回復魔法。


 力強いイメージがあるオーガの少女。

 エリスであれば力任せの会心クリティカル技や肉体強化系の補助魔法バフなどがある。


「コモリ……でも、その観察眼って」

「うん?」

「確か、自分自身はれないのよね」

「ああ、そうなんだよ……表示出ないんだよ。まあ出たとこで『大した事』は無いだろうけど……」


 とまあ……残念ながら。

 俺については先の話通りで。

 扱える魔法が0という、まだ何も発揮できず。

 足を引っ張っているという自覚もあったが。

 そんな俺の雑魚悪魔っぷりは一旦置いても。


 とにかくこの特性【アビリティ】と。

 使える技の別称【スキル】の。


 この二つこそが戦闘において役立ち。

 解析までに時間こそかかりはするが。

 敵の強さを知るうえで大切なのだった。


「ムググ……ふう。美味かったぞ」

「ハハハ……マジで、お前の幸せそうな食いっぷり見ていたら。こっちまで腹が減ってきたよ」


「じゃあ、何か食べる?」

「そうだな……じゃあ俺もさっき一緒に買ったパンをくれ。エリスみたいに食って強くなるわ」


 と、まあそうして俺は冗談を入れて。


(……異世界に送られて、美少女と冒険してるんだから、一回くらいはカッコいい所見せたいぜ)


 そう自分の弱さを改めて自覚し。

 こんな……何とも言えない。

 未だ消えないわだかまりを。

 自身が転生したこの雑魚悪魔のボディに。

 そういった劣等感を抱きつつも。


「はい、どうぞ。さっき買ったナッツパンよ」

「ありがとう、アナスタシア。じゃあ、この後の山道に備えて……いただきます」


 彼女から受け取ったパンを口に含んだ後。

 ステータスチェッカーを荷物の中にしまって。

 その休憩時間を満喫するのだった。




 だが……最後に。

 己の弱さもさることながら……。


 俺は『この後の騒動』でその重要性を。

 戦闘においてこの『二つ』……。

 まずスキルが、技が大事なのは確かなんだが。


 特に……特性アビリティが如何に重要で。

 恐ろしいかを認識する事になるとは。


「もう、後十分くらいしたら行きましょうか」

「「賛成!」」


 まだこの時点では……。

 俺達一行は予想だにしてなかった……。




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