3-1.変態はエロの為に奮起しました
「デヘヘヘ……よく来てくれたね……」
「アンタか? あのクエストを出したって男性は? 俺が、今回紹介を受けたコモリだぜ」
「おっと、静かに頼むよ……今から頼む事は……人前じゃとても話せない事だからね……ヘヘヘ」
俺達は昨日の朝。
「おっ……悪い悪い、ヒソヒソ……これ位か?」
「うんうん……それでいいよ。でも……本当に丁度良かった。君みたいな性別がオスで、体の小さな使い魔がいてくれて……グフフフ……」
「オスって言うな。男って言え、男って……」
このサイドの町にて初めて受けた。
困り事の解決に寄せられた人々からの依頼を。
言ってしまえば、クエストを完了させた。
受注後すぐに被害に遭った村へと向かった後。
村長より話を聞き、その夜に村を襲っていたというモンスター達を反省させて、一悶着ありつつも、和平交渉まで成立させたのだった。
「ヒソヒソ……それよりも、あの【報酬】はマジなのか……いくら何でも『金貨』って……」
そして俺達はクエスト完了後、約束通りに報酬。
一文無しだった俺達の命を繋ぐ金を入手した。
「金貨って俺の知識が正しければ、相当の価値があるんだろ? まあ、あんなわざわざ手間のかかる所にクエストを貼っていた位だから、信用しない訳じゃないんだけど。一応確認したくてな」
「いい、いいや……うう、嘘じゃないよ。僕は見た目こそこんなだけど……割とお金持ちなんだよ」
けれども……まだまだ足りなかった。
村人達から貰えたその報酬だけでは……。
銀貨三枚、銅貨四枚だけではまだ足りなかった。
いや、別にその日をやり過ごせない訳じゃない。
安心して眠る為に、数日分の宿を借りたり。
値段は高めだが、宿で食事を注文したり、食材を買ったりする分には問題無かったんだけど。
「……本当かよ。何か胡散臭い気がするけど」
「ああ……本当だよ……だから報酬の方は金貨で間違いないし、依頼をこなしてくれたら、しっかり払うよ……上乗せだってあるかもよ」
このサイドの町で暮らすのが目的では無い。
あくまでも……俺達の目的は冒険なんだ。
どこまで広がっているか、果ても知らない。
境界が何処にあるのか全く見当もつかないこの広大な世界を巡って、ラスボス的な闇の覇王の痕跡を辿っていく事こそ真の目的なんだ。
だからこそ一ヶ所に留まる目的は無かった。
「オッケー……じゃあ……クエストの詳細を教えてくれ……まあ『あんな条件の時点』で訳ありなのは何となく察してはいるけどさ……」
それに……一応最後に付け足すなら。
そもそものところ俺達は金欠では無かった。
道中で遭遇し戦ったモンスターが落としていく。
コアや素材、不必要なアイテムの売却など。
それなりの蓄えがあったうえで冒険していた。
「うんうん……察しが良い人は嫌いじゃないよ。じゃあ肝心のクエストの中身についてなんだけどね。……デヘヘヘ、これはね……一昨日の話で」
しかし……その肝心の金が盗難に遭ってしまい。
まあ、偶然にも犯人を見つけるまでにこぎつけ。
回収まで、もうあと一歩というそこまでは良かったんだけれど……そうは問屋が卸さず。
なんと……その犯人のモンスター達は硬貨が大好物という事で、俺達からくすねた金は全て、食われてしまい取り返せなかったという……。
そんな自分達の深刻な金不足について。
不幸に見舞われた事情踏まえたうえで。
今の俺はというと――。
「僕見ちゃったんだよね……そこで――」
こんな人もあまり立ち寄らない。
町の端っこの空き家にて、変態な男二人。
さらに言えば、それもその笑い方からして。
何処か怪しさがにじみ出ている男性と一緒に。
こんな暗い夜更けに、一体何の話題を、こうしてコソコソ話していたのかと言うとだな…………。
いや、別に『そっち系』の話題とか。
そういった行為についてじゃないんだ。
俺が彼から聞いていたのはコレについてだった。
『~サイドの町、深夜限定の裏クエスト~
クエスト名 噂の『アレ』を撮ってほしい!
クエストランク【???】
依頼主 健全なお兄さん。
契約金 なし。
※但し、写し箱の破損時は弁償。
報酬 金貨三枚。
詳細 対面後、依頼者より説明
☆受注可能条件☆
特定の条件を満たした男性に限定する』
という、表に中々出ない秘密のクエストを。
たまたま夜に受注を受け付けている男性に俺が尋ねなければ、決して教えてもらえなかった。
言ってしまえば『いわくつき』の特殊な依頼を。
高報酬ながら簡単そうなクエストについて。
その説明をこうして受けていたのだった。
「と、いう訳でね……『その人の写真』をこの写し箱を使って撮ってきて欲しいんだ……使い方は赤いボタンを押すだけ。それでバッチリだから」
そうやってそんな経緯を辿って話は現在に至り。
俺は、形的には昔でいう映写機というか。
小型のプロジェクターにも似た四角い物体を。
彼の話によると写し箱という写真を撮れる。
所謂カメラに似た装置を依頼主から預かった。
「じゃあ、そろそろだから……デュフフフ……ちゃんと撮影してきてね……期待してるよ」
「ああ、任せてくれ!」
そして俺は『ある人』をフィルムに残すべく。
こんな真夜中しかシャッターチャンスが無いという事で、早速預かった写し箱をぶら下げて。
目的地に向かうべく動きだすのだった。
「じゃあ……グフフ……よろしくね」
「勿論だぜ。同志よ、アンタも金の用意頼むぜ」
「グフフ……任せたまえ。我に二言無しだよ」
……………………えっ?
お前は結局……何を……誰を写すのかって?
なんで危ない筈の夜なのに、そんなやる気に。
そんな見ず知らずの男性の為に。
出会った当初は、うわ、スゲェキモい奴だなと。
外を歩けば如何にも皆から距離を置かれそうな。
下手をしなくてもキモオタと揶揄されかねない変なオッサンだなと訝しんでいた癖に。
どうしてこの半時間程話をしただけで。
今では戦友みたいに熱い言葉交わし。
互いに熱い闘志を燃やしているのかって?
(へへへ。金も貰えて目の保養も出来るなんて、男してこの世に生まれてよかったぜ!)
どうして……そんな、まるで漫画みたいに。
意気揚々に張り切って飛んでいるのかって?
それは、これから『エロい美女』を。
美しい女性を撮影しに行くからだけど?
俺も依頼主も互いに同じエロを求める男で。
性欲に忠実な健全な男子だったからですけど。
それ以上に何か結託しない理由はありますか。
アニメとかで言う温泉の覗きイベントの様に。
男達が団結しない理由はございましょうか?
「おっしゃあ! 最高の一枚を期待してろよ」
「うん。待っているよ、我らが同志!」
「ああ! じゃあ早速行ってくるぜ!」
と……言う訳で。
俺は、巨乳、赤い髪と情報があった美しい女性を。
例えファインダー越しでもいいから、一目見る為に、まるで特ダネを狙うカメラマンの如く、奮起して目撃情報があった場所へと向かうのだった。
……まあ……ばれたら勿論殺されるだろうし。
肉片一つまで消滅させられる可能性があるから。
初心で純粋な相棒のアナスタシアは。
エロ行為を嫌う女子らしい彼女には内緒で。
スヤスヤと寝息を立てていた彼女を置いて。
俺は極秘裏に、冒険再開用の大金を得る為にと。
こうして単独でクエストを受注するのだった。




