幕間-end.変態はお金を食われました
そして、そんな器の大きさに憧れさえ覚えつつ。
クエスト発生の発端となった出来事の詳細。
もとい……彼自身が度々自慢していた、王であるという素質の凄さを改めて俺達が認識する中で。
「あっ、そうだわ。大切な事を忘れてた」
インパクト溢れる彼の対話を終えて。
アナスタシアはハッ! と手を叩いた。
そして何かを思い出したように告げる。
そういえば……確かに何か抜けている様な。
と言うよりはすっかり忘れていたんだけど。
「あの、チクチクキング様……」
「うん? どうしたのであるか?」
「王である貴方に向けて、こんな事を告げるのも失礼とは承知しているのですが……」
「構わんぞ、申してみるのだ。遠慮する事は無い」
「はい。実は、私達お金を盗られてしまって」
あっ、そう言えば、そうだった。
俺達はチクチク達にお金を盗まれていたんだ。
必死で戦って、負けて、デカいのが来て。
地鳴りを起こす挨拶で驚いて、事情聴いてと。
あまり息を付く暇も無く、様々なイベントをこなしていたから完全に抜けてた。
(あぶねぇ……危うく帰っちまう所だった)
「ああ……その事なのであるが……」
するとチクチクキングは。
「さっき同族よりその報告を受けたのだが……」
表情こそいまいち読み取れないが。
彼女の発言に対して言いにくそうに告げる。
「……えっ? 何かあったんですか?」
すると……。
「うむ……実の所――――」
「「ええっ!?」」
その返事を聞いた時。
俺は、正直勘弁してくれよと切に願った。
マジで……次から次へと展開が急すぎて。
もう追い付けない程の驚きの連鎖だったのに。
下手すれば災害に匹敵する大地震謝罪で驚き。
次は金についてでまたこうして、唖然とする。
無論、その金の内容はチクチク達が俺達盗んだ。
これまでコツコツ溜め込んだ金銭の在り処で。
彼が話してくれたのは、その消息についてだったんだけれど……。
「それ……マジかよ……」
「マジである。王である我輩は嘘などつかぬ! それ故に我輩が言った言葉は全て真実なのだ……確かに非常に申し訳ない事実ではあるが……」
「嘘でしょ?」
「嘘ではないのだ」
一体……誰が……。
どこのどいつが『そこ』にあるなどと思うのか。
いや、別に……隠し場所がおかしかったとか。
火山や猛獣まみれの危険地帯とかなどという。
そんな、思考の一つとして浮かぶような話では。
常識で測れる範疇の真相では決して無かった。
では、一体何処にあったのか。
その答えはというと……。
「昔から、我々チクチク族は『硬貨が大好物』なのだ。だから金品はともかく、同族が其方達からくすねてきたという大量の硬貨は既に……」
「食べちゃったって事か」
「うむ……正解であーる!」
いや、正解じゃないよ!
正解しても切ないよ!
ていうかある意味正解の方が傷つくわ!
(おいおい……マジかあ。金を食うモンスターって、道中で出会ったら中々に困る奴じゃん)
…………意味合いこそ全く異なるが。
ふと俺の頭には金食い虫という単語が浮かんだ。
そう、無情にも……なんと悲しい事か。
俺達が元々持っていたお金達は消化済み。
その全てが、チクチク達の『腹の中』だった。
食べ物を買う為にある筈の金銭なのに。
いつしか食べ物そのものに化けていたって。
そんな笑えない真実が語られたのだった。
「取り返して……すぐに冒険再開だと思ったのに」
「はあ……結局、盗まれたお金は諦めて、とにかくクエストでお金を溜めるしか無いって訳ね」
一緒に希望も食われた気分だった。
盗んだ犯人を運よく見つけ、クエスト完了ついでに金も取り返せる、まさに一石二鳥の状態で意気揚々と奮闘していたのによ……。
マジで参っちまうぜ、全く。
「そのお詫びと言っては何だが……」
「あっ……もう飛ばなくても大丈夫ですよ」
「違うのである! 落ち着いて聞くのである!」
……と、そんなショックな出来事で。
消えた金が取り返せぬという事実に対しては。
アナスタシアも俺もすっかり意気消沈し、がっくりと肩を落としてしまい。
重いため息を漏らす最中だった。
「何か君達の役に立てる事は無いだろうか? 例えば情報などはどうであろうか? こう見えても我輩の知識は豊富であるぞ。特にこの辺り一帯の事ならば、同族以外にも知り合いが多いのである」
すると、ただ残念だ、運が無かったな、と。
一言で済ませる薄情さを見せるのではなく。
モンスターながら罪悪感を持つ優しいチクチクキングは、俺達に報いようとそう向けてくれた。
「ほら、情報とは時には金で買えぬ事もあろう。モンスターの友人も多いおかげか、何か探し物や町など、ちょっとした出来事でも構わんぞ」
彼はせめてもの罪滅ぼしに情報提供をと。
金を食ってしまった代償として提示して来た。
(情報か……。まあ確かに、何か役に立つ話があるなら助かるし)
だから俺はそこで……。
「そう、だな……実は俺達、今は依頼をこなしているけど、世界中を旅してるんだ。そこで……最近何処かで異変が起こっている場所とか、騒がしくなっている町とかって聞いたりしてないか?」
ダメ元でそう尋ねてみた。
特に具体的な内容が無くてもいい。
あくまで断片的な情報だけでも。
ボヤッとした曖昧な情報でも構わない。
とにかく知っている事を聞いてみようと尋ねた。
すると……。
「異変か……異変のう……何処かで聞いたような。あれは確か木人のバイオウッドー君から……」
質問に対して思い当たる節があったのだろうか。
彼は一度、目を瞑りその場で考え込むと。
友人のモンスターから聞いたという情報を。
「えっと…………………………」
少しの間時間を置いた後に。
「そうだ! 思い出したのである。あれは、我らが住まうモンターニャ地方の『とある国』なんじゃが……ちと変わった噂を耳にしてな。何かの役に立てるかもしれん。試しに一回聞くのである!」
「おおっ! あるなら早速頼みます」
「うむ! よかろう!」
話の内容思い出したようで。
俺が説明を求めると、すぐに話してくれた。
そしたら……これがまた。
何とも、大当たりだったのだ。
「そこは小国ながら、他の地方に続く汽車が有名でな。名を『ガンテルツォ』と言うのだ。バイオウッドー君の話だと、結構前からそこに風変わりな魔物達が現れたらしく、それからは雰囲気が変わったと聞いた事がある。だから、もし。特に当てが無いのであれば見に行くと良いのである」
高低差の激しい山多き地、モンターニャ地方。
その山中に建国されたという、まだ俺達が訪れた事も、目にした事も無い未知の国ガンテルツォ。
そして、初めて名を聞く国において。
(風変わりな魔物達か……。以前のプルミエルやドージエムと言い、確かに怪しいな)
まだ真相こそはっきりとはしないが。
もし……彼が聞いた話が本当だとすれば。
恐らくその国を変えたという異変を起こした奴。
突如襲来したという、その魔物とやらが仮に。
本当に闇の覇王軍の配下であれば、そこにあるかもしれない。
その国に、俺達が今追っている重要アイテム。
二つ目のグランドストーンがある可能性が高い。
さらに……もしそのガンテルツォに。
本当に覇王の手先がいたと仮定すれば、チクチク達がイライラし始めたという邪気の説明。
彼らの国がある同じモンターニャ地方にて。
邪悪な魔物が立ち寄っていた事で、解答にもなり、あながち辻褄が合わない訳では無い。
「……アナスタシア……どうする?」
「行ってみましょう。どの道、石の在り処に近づかないと魔法のコンパスも反応しないもの」
「確かにそうだな。分かった。じゃあサイドの町で準備を整ったら、早速向かうとしようぜ!」
「ええ!」
だからこそ……。
俺達はその情報を信じ即決した。
今日新たに知った国ガンテルツォ。
そこを次なる目的地と定めたのである。
それで、俺達は次なる目的地の情報を得て。
冒険の鍵となる大きな手掛かりを入手した後。
村人達に迷惑をかけたお詫びが出来ないかと、真摯に告げるチクチクキングと一緒に。
「あっ……皆、丁度良く起きてるっぽいな」
「どう考えても、さっきの大地震のせいね……」
「まあ、あれで起きない奴がいたら逆に怖いわ。どんだけ図太い神経してるのかって聞きたくなる」
長い夜が明け始め、日の光が差し込む村へと。
よく見たら、『村長以外』の住民達が寝間着姿で。
その状況がイマイチ掴めずに、いずれも口をポカンと開けた顔をズラリと並べる彼らの元へと。
俺達は向かって行くのであった。
クエスト【ドイナカ村を救ってくれ!】完了!
……うーん、まあ……村民達はビビってたけど。
襲ってきたチクチク達をちゃんと反省させたし。
チクチクキングも盗んだ金品の返却以外に。
お詫びとして高値が付く自分達の抜け殻をプレゼントするって事で成立して、報酬も貰ったし。
……ひとまず完了でいいかな?




