表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/62

1-12.変態が眠る間に

細分化前タイトル

『男は美女の話に弱い』

初掲載 2018/08/05

細分化前の投稿文字数 16512文字

細分化 2018/09/25


 「…………………………」

 

 ……気に食わぬことが三つある。


 この地で私が目的を果たし。

 今去ろうと動くまでの間。

 それまでに『三つの異変』を。

 この身で感じ取ったのだった。


 しかも、いずれも目には見えぬ。

 気配というあやふやな存在が原因で。


(うむ…………)


 私はこの高地より。

 見える地上の風景を眺めていた。


 夜という、天が闇へと移り変わりゆく。

 このひとときの時間にて。

 暗闇が大地を黒く染め、光が失われる闇の刻。

 邪悪なる魔の者が徘徊するに相応しい時だからこそ。


 ……私は心地よく過ごせる筈だった。


(なんだ……この拭えぬ感触は……)


 しかし、残念だったが。

 そう心地よい気持ちに浸る訳にもいかなかった。

 事が順調に運び、結果も目標以上になり回収でき。

 これで気兼ねする事無くに次の場所に移れる。

 次なる目的へと歩を進められると。


 ……そう当初は考えていた。


(やはり、今も消えている……どうしたというのだ)


 私が不快に感じた理由の一つ目。

 それはある気配の消失だった。


 今回私が闇へと誘ったのは湖の守護者の名乗る小生意気な存在。

 私は奴にとっての心の小さな隙を突き、邪悪に染め怪物へ変えてやった。

 特殊な力を持つ者を堕とすには少し骨を折るが、それでも見返りは絶大。


 あの少年姿の守護者は見事に強力な怪物へと変貌し。

 目論見通り、自我を失ったように暴れてくれた。


 戦う力を持たぬ愚かな住民共に向けて。

 その強靭さにより甚大なる被害と恐怖を与え。

 果敢に立ち向かった人間共も歯が絶たず意気消沈。


 そして、その後に敗残者の多くは怯え絶望し町を次々と離れていった。

 そうやって恐れ、逃げていった連中の。

 そんな暗き感情の思念を集め、目的が達せられた後も。

 守護者やつは消せぬ邪悪な気配を漂わせ続けていた。


(もしや……何者かに止められたのか)


 だが……それが忽然と消えたのだ。

 消失直後は何か間違いかと思えたが。

 どうやら事実だったらしく。


 何も感じなくなってしまった。

 私が好む邪悪なる気を。

 と、これが一つ目だった。


(だが……そう簡単に止められぬ筈だ)


 次にこの一つ目と関連するであろう。

 違和感の二つ目だ。

 こちらも今となって感じた物では無いが。

 現在も消せぬ不審な気配。


(……とすれば、あの気配を放つ者の仕業か)


 恐らくこれは怪物を倒した。

 その張本人が発したのであろう。


 先程の邪悪な気配の話からは一転し。

 今度は対照的に私が忌み嫌う聖なる気配だった。


 これは太陽の直射から身を隠し潜んでいる時だ。

 正確な方角、位置までは掴めなかったが感じた。

 むしろ私が暗黒の者だからこそ。

 ここまで過敏に、より強く反応したのだろう。


 極僅かの時の流れの内で、膨大な聖の力に勘付いた。


(くそ……確かめておかねばならなかったか……)


 それも……過ごした時の中で出会った者共とは違う異質さを。

 これまでに出会い、殺してやった神聖を重んじる者共。

 神官やシスター、刃向ってきた教徒たち。

 また光の力を身に宿す魔法使いなど。

 そんなゴミ共とは格が違う、寒気すら感じる強大な力。


(強引にでも外へ飛び出して、正体を把握しておくべきだった)


 別に対峙した訳ではないが、妙に引っかかる。

 だからと言って解決できるわけでもないのにだ。

 継続して放出されている力であれば、すぐにでも痕跡を辿れる。

 時間はかかっても力の主を探し当て、排除できる。


 だが今回あくまでもほんの僅かな。

 すぐに消えてしまう程だった為にそうはいかない。

 現在は感じられない点も相まってさらにもどかしい。


 加えてまだ、力を纏える様な手練れでは無く。

 成長段階に過ぎぬ存在なのか。

 信じたくはないがはたまた私の錯覚だったのか。

 そんな出来事一つに拭えぬ腹立たしい感触に苛まれたのだ。


(……いや……まあ落ち着くのだ、私よ。成果は得られたではないか。後は去るのみだ)


 しかし……長考の末。


 私は敢えて一時それを放棄する事にした。

 確かに気にならないと言えば嘘にはなるのだが。


 では……感じたからどうしろというのだ?

 気配が消えた以上、その軌跡は追えぬ。

 反対にあまり捉われ過ぎても時間を無為にするだけだ。


 目論見の一部がずれ、邪魔者が現れこそしたが。

 こうして確かな結果は得られた。

 我らの計画に必要な力の一部は手中に収めたのだ。

 あまり欲に駆られ、無駄な行動を取り時間を割くのは得策とは言えない。

 完璧に忘れる事はしなかったが、一旦保留にと。

 そう冷静に割り切る事に決めた。


(さて……残るは)


 そして……残った最後に三つ目の気配だが。


(いやいや、まさか……な。あり得ぬ事だ)


 こればかりは確実に私の錯覚だろうと確信した。

 そうだとも、最早『あのお方』が生きているはずが無い。

 あのお方は我らが主『デミウルゴス様』が不治の一撃を負わせたのだから。

 どうせ気のせいだと、それに関してはすぐに拭う事が出来た。

 あり得ぬ事なのだ……。


(では、そろそろ移動するとしようか。太陽が出ぬ前に……)


 そうして生まれた二つの違和感に己の答えでケリをつけ。

 私は此度の成果を手中に去った。

 同志たちが肩を並べる本拠地へと戻る為に。

 人知れず暗闇の中へと姿を消すのだった。

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ