#76 あの頃のギター
――村長の家
「チヒロ、これを見ろ!」
村長がそう言って持ってきたもの、それは……
「ギター?」
「懐かしいなー、押し入れに入れてあったんだなー」
村長の持ってきたギターは、黒色のアコースティックギターだ。
「ギターやってたんだ?」
「趣味で始めたんだよ。学生の頃は、毎日練習したもんだ」
村長は話しながら、ギターのチューニングをしている。そして少し音を鳴らしてみると……
「おー、そうだ。こんな感じだ!」と、久しぶりにギターを弾いて喜んでいた。
「あれ、ギターじゃん!」
その日の午後、ナオが遊びに来た。そして早速ギター、に反応する。
「村長が昔、使ってたやつだって」
「へー」
そう言うとナオは、おもむろにギターを持って構える。そして……
「え?」
チヒロは驚いた。ナオがギターを弾いてるのもそうだが、その腕前がかなりのものだったからだ。そして2人は気づいていないが、村長も途中から聞いていた。唖然とした顔で……
「父さんに教えてもらったんだ。弾けるの、この曲だけなんだけど」
「へー……あれ、村長?」
2人は、やっと村長がいたことに気づく。そして村長は……
「ナオ」
「あ、ギター勝手に使ってごめ……」
ナオが言い終わる前に村長は、今から出ていく。そして、ギターを入れたケースを持って再び居間の方へ来る。
「ちょっと出かけてくる!」
それだけ言って村長は、どこかへ行ってしまった。しかし……
「俺ん家だよね?」
「ギターを教わりにな……」
「そんなに悔しかったのかな?」
「多分な」
2人は、村長の目的をお見通しだった。




