#40 ワタルの家出(前編)
――村長の家
「家出してきた。だから今日は、ここに泊まります」
「……」
今日も暑い昼頃。ウチの居間には、チヒロと昼寝している村長ともう一人……ワタルがいた。
「家出……? 理由を聞いてもいい?」
正直言って大した理由ではないと思うが、俺はあえて聞くことにした。
「実は……」
ワタルが、家出した理由はこうである。
この前のテストの点数が悪かった。そのテストを隠そうとしたが、今日の朝、お父さんにバレて叱られた。そしてお父さんは、『次もテストの点数が悪かったらしばらく柔道の稽古は禁止』という条件を突き付けられた。それに反発したワタルは、家出をしてここに来たとのこと……。
「なぁ、もしかしてだけど……お前のお父さんが来るまでここにいるって言うんじゃないだろうな……?」
「えっ、いいのか?」
ワタルが明るい顔になる。
「あぁ、いいぞ」
「いいのかよ!」
村長があまりにもあっさりと了承したので、チヒロは思わずツッコんだ。
「まぁ来たとしても、あっさりと引き下がるわけにはいかない。自分の出した条件を諦めてくれるまで俺は戦う……」
そう言い終えた後、ワタルは「ふっふっふっ……」と小さく笑っている。それを見たチヒロは、ため息を吐く。
「大体、父さんには許せない理由がもう1つある」
「あ、まだ続くの?」
途端にワタルは真剣な顔になる。
「父さんはな、俺の大事な……」
「大事な……?」
「大事な……プリンを食ったんだよ、あの人は!」
「……」
きいた俺が馬鹿だった……と、チヒロは思った。
「んーっ……あれ、お前はワタルか?」
どうやら村長が起きたようだ。
「あ、久しぶり村長!」
そしてワタルは、村長にもここに来た理由を話す。
「そうか……わかるぞお前の気持ちは、ワシも昔な……」
「いいよその話は!」
これで2回目のツッコミ。チヒロは、早くワタルのお父さんが来ることを願っていた……。




